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恋をする甘党の彼_16
◇…◆…◇
朝、寝ぼけた浩介君にママと足元に抱きつかれて、キュンとなった。
「浩介君、おはよう」
と頭を撫でれば、母親ではなく真野だという事に気が付いたようで。
「あ、お兄ちゃんだった」
そういって笑顔を見せる。
「くぅ~!! なんて可愛いんだ!」
その体を抱っこして寝室へと向かう。
気持ちよさそうに眠る信崎を見ていたら、ちょっとした悪戯を思いついた。
「ねぇ、浩介君、お布団の中に潜ってパパをくすぐってきて」
「うん!」
元気よく布団の中にもぐっていき、くすぐりはじめた。
「ん……、ぐは、ちょっと、そこは」
「こちょこちょ」
そう口にしながら手を動かす浩介君。
「や~め~ろぉ~、浩介ぇ」
くすぐったくて身をよじる信崎に、
「目、覚めました?」
と頬を撫でる。
「わぁ、起きるから、浩介、やめて」
「浩介君、もういいよ」
と布団を捲りあげて浩介君を抱き上げた。
「楽しかった」
「そう。じゃぁ、朝ご飯を作っちゃうからパパにお着替えさせて貰ってね」
「はーい」
手を上げてよいお返事をし、服の入ったリュックの傍へと向かう。
「なんか、真野にパパって言われると、本当の夫婦みたいだな」
そう嬉しそうに言う信崎に、真野も照れつつ。
「実はですね、さっき、寝ぼけた浩介君にママって言われました」
キッチンでの出来事を口にする。
「そっか。じゃぁ、浩介を着替えさせてくるな、ママ」
と、ママの部分をやたら甘く耳元で囁き。
耳を押さえながら信崎の方へと顔を向けると、口角を上げて浩介の傍へむかう。
真野は寝室を出てリビングのソファに倒れ込むように身を投げる。
恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。
「アレはやばいって」
足をばたつかせてクッションに顔を埋める。
ドキッとした。
浩介に言われた時は微笑ましく思っていたのに、信崎が相手だと胸の鼓動が落ち着かない。
唸り声を上げている所に、脇腹にくすぐったさを感じて。
「ひゃっ、え、何?」
「こちょこちょ攻撃」
と浩介が真野の脇腹をくすぐっていた。
「ちょっと、浩介くぅん」
「さっきの仕返し。ほら、もっとだ、浩介!」
「え、信崎さん、ひゃはっ、もう、だめぇ」
降参と、掌を浩介の方へ向ければ、信崎が良くやったと浩介の頭を撫でまわす。
「えへへ」
得意げに見上げてくる浩介君と信崎に、真野はキュンとしながら二人に朝食にしようとキッチンへ行くように言う。
「はーい、ママ」
なんたる不意打ち。
声を合わせて言う二人に、真野は目を大きく見開いてかたまる。
「な、なっ」
そんな姿に、悪戯が成功したとばかりに手を合わせてキッチンへと向かう二人。
「あぁ、もぅッ!」
この親子、どうしてくれようか。
一人、真っ赤になる真野に、キッチンから信崎が呼ぶ声が聞こえる。
「はい、今行きます」
なんだかんだ考えた所で、結局は好きな人の笑顔の前に勝てるわけがない。
真野はしょうがないよねとため息をつき、愛しい人の待つキッチンへと向かった。
【恋をする甘党の彼・了】
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