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求愛される甘党の彼_17

 それから何度も肌を重ねて放ちあい、百武の中へ溢れるほどに注ぎ込んだ。  汗と精液でべたついた身体を嫌そうに撫で。 「せんせぇ、風呂に入りてぇです」 「了解」  その、かすれた声が色っぽく。百武の為に風呂の準備をしに向かった。  暫くし、湯が張り終えた事を知らせる音が鳴り、バスルームへと行き一緒に湯船につかる。 「腰、大丈夫?」  心配そうに後ろから抱きしめる乃木に、おもいきり体重をかける。 「大丈夫なわけ、ないでしょう? 無理だってぇのに何度も突っ込むし」  ぎゅうぎゅうと押し込められて、 「……ごめん」  と肩に額を当てる。 「でも、嫌じゃないですから」 「やっと俺が好きって事を認めたな」 「それとこれとは別です。先生の事は苦手だと何度も言ってますよね?」 「そ、そんなぁ」 「ふっ、情けねぇ顔」 「あ、笑ったなっ」 「あははは、脇腹くすぐるのはずりぃですってば」  狭い浴槽で水しぶきを上げながらはしゃぎ、そして彼を抱きしめる。 「好きだよ」  甘く囁き、耳朶を噛む。 「ん、俺も、同じ気持ち、みてぇです」  腰を抱きしめる乃木の手に、百武の手が重なり。  顔を振り向かせ、目元を赤く染めて乃木を誘う。  やっと心から欲しいと思っていたモノが手に入った。  吸い込まれるように互いの唇が触れ、先ほどまで弄っていた箇所へと指を這わせた。 ※※※  恋人同士になったからと甘い想いを持っていたら、仕事だと割り切り、何時もの通りつれない態度。  ちょっかいをかけるものなら凄まれてしまう。 「百武君、顔が怖いよ」 「顔が怖いよ、じゃねぇでしょうが。乃木先生が真面目に仕事をしないからです」  今日は読み切りの打ち合わせなのだが、うわの空の乃木に百武の叱咤が飛んでいる最中というわけだ。 「だって、部屋で打ち合わせしたいって言ったのに」  そっと手に指を這わせれば、それを払われてしまう。 「二人きりだと真面目にやらねぇでしょうが」  確かに、二人きりになったら百武に何をしてしまうかわからない。 「俺をガッカリさせねぇでくれませんかね?」  いつでも別れますよと耳元で囁かれる。 「え、それは絶対に嫌だ」 「なら、ちゃんと仕事をしてくれますよね」  と、ニィと口角を上げる。  たまらない表情。痺れるくらいに怖い。  本人には決して言えないが、小さな子供やか弱き女性の前では絶対にしない方が良いと思う。 「二人とも、珈琲をどうぞ」  珈琲とカフェモカが置かれる。 「ありがとうございます、江藤さん」  仕事の打ち合わせでも百武は珈琲を口にするようになった。  自分に心を許してくれている、そう思うとニヤニヤとしてしまう。  甘いカフェモカに口元を緩ませ、表情が和らぐ。  可愛い甘党の恋人を眺めつつ、ブラック珈琲を口元に運んだ。 【求愛される甘党の彼・了】

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