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わわわっ、真横でなんかすげー物音が、え、なにこれ、ほんとどっきり? まさか俺以外全員仕掛け人とか!? 明かりついたら「ちゃらっちゃ~♪」みたいな音楽といっしょに「どっきり大成功」みたいな看板見せられるとか? 俺、うまくリアクションできっかな、 バチンッッッ またもいきなり……照明が点いた。 司会者や女子アナは必死で取り繕い、スタッフはなんか走ったり耳打ちし合ったり、あ、あのADの人、すげー勢いでカンペ書いてる、大変そ~。 「おい」 最初の緊張はどこへやら、観客気分でのらりくらりしていた俺は隣を向いて、 「ぎゃああああああ!!!!」 素リアクション……完璧なの、出ました。 だ、だって、さっきまでイケメンヒーローが座ってたところに。 狐面つけた、狐党の……うん、これ間違いない……ボスだ、狐党のボスが……緒方が座ってらっしゃる、 「ぎゃ!!」 荷物みたいに脇に抱えられた俺。 イリュージョンみたいに突然現れた狐党にさすがのヒーローヒロインも、他の皆さんもびっくりして固まっている中、緒方は俺を抱えて大股で前へ。 そうして緒方は凍りつく観衆を前にして不敵におらおら全開で言うのだ。 まず司会者を指差して、こいつは現在脱税中、と。 次に女子アナを指差して、こいつは後輩アナに関する偽過去をネット掲示板に流して自宅療養に追い込んだ、と。 そしてなんかスタッフの偉そうな人を指差して、こいつは現在××××、あ、完全放送禁止ワード出た、コレ。 そして後ろに引っ繰り返っていたイケメンヒーローを指差して、こいつは以前××××、アウト、アウトォォォォォ! てか人間的にそれアウトォォォ! 緒方、それ、ほんとなの? 「狐の戯言を信じるか信じないか、その判断はお前らの自由だ、見極めろ」 そして強張っていたヒーローヒロインがやっと反撃に出ようとした矢先にもっとひどい混乱がスタジオを襲った……。 「虎とアナコンダが逃げちゃったよー」 「てか逃がしました」 「みんなおなかへってるみたいよー」 動物部門の猛獣キャストが……ガウガウズルズルやってきて……みんな逃げ惑うは絶叫するは……緒方に指差された奴らは腰が抜けてるし……これ、ガチでお茶の間に現在進行形で流れてんの……?  視聴率どんだけだよ。

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