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出会いは突然に
「なんすか、これ」
「いや、人間に対して“これ”呼ばわりはマズいだろ」
自宅の前で茫然と立ち尽くす男子大生2人というのは、間抜けだと思う。ここが2人の家だと分からない人間には、不審者だと思われても言い逃れできない。
別に2人揃って鍵を忘れたり、なくしたりしたワケじゃない。だから自宅には、普段通りに入れる。
入れる筈だった。
ただ、今朝家を出る時には、いつもと変わっていなかった扉の前に、見慣れない物体が1つ。
ああ、物体、なんて言い方をすれば、また海里 に怒られるかもしれない。陸斗 は内心でそう思うも、自分では「見慣れない物体」としか言えないのだから仕方ない。
変わり映えのない、見慣れた玄関扉。その前にいる、見慣れない物体こと、膝を抱えて座る小さな子供。
その子供がぴょこんと立ち上がって、これまたぴょこんと元気よくお辞儀をしてみせた。
「これから、よろしくお願いします!!」
お行儀よく、元気よく。そんな風に告げられた言葉ではあったけど、それは陸斗達を困惑させ、結果として冒頭に至る。
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