いくら困惑しているといっても、あのまま子供を放っておくワケにはいかない。あのまま家の前に居座られたら、近所の人間から変な噂を立てられかねない。 　別に見ず知らずの子供がどうなっても陸斗(りくと)はどうでも良いのだけれど、海里(かいり)や自分に火の粉がかかる危険性があるっていうなら話は別だ。避けないと。 　しかも海里はやさしいから、「放っておけないだろ。何かあっても困るし、風邪をひいちまう可能性もある」なんて言って、にこやかに、子供を家に招いてしまった。 　今、リビングに行儀良く座っている子供を見ても、陸斗には困惑しかない。 　何をすれば良いのかなんて、まるで分からない。 　これは、あれかなぁ。考えるのは、時折ドラマで見掛けるアレ。突如子連れの女が出てきて、「あなたの子供です」なんて言い出すヤツ。 　そんなものが思い付いたものの、当の陸斗には心当たりは皆無である。浮気なんてしてない。清廉潔白とでも言ったところか。だって海里以外に興味なんてないし。 　ただ、浮気自体は一切していなくても、女から子供を押し付けられるだけの心当たりであれば、陸斗は持っていた。 　何分、陸斗の性格は良くないのだ。 　顔は良い。運動神経も良い。成績もそれなり。女子からはモテる。しかし性格に至っては最悪。 　女と付き合うなど有り得ないし、そもそも話す事さえ面倒くさいと思っている。だからか告白も自然手酷い物となってしまい、方々から恨まれていたとて文句は言えないのだ。 　もっとも、陸斗本人は、面倒くさい女相手に当然の対応をしたまでであって、「酷い！」と言われても「なんで？」と首を傾げたいところなのだが。海里にも「いや、あれは酷いぞ？」と言われるから酷いのだろう。 　それこそ、振られた女が腹いせに、扱いに困った子供を送り付けてくるくらいには。