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 ただ、陸斗(りくと)がじっと子供の姿を見つめているのは、そんな、自分に恨みを持っているだろう女の面影を探しているワケじゃない。そもそも、その説が本当であったと仮定しても、犯人を探す方法としては残念ながら無意味だ。  子供が100パーセント親に似るとは言えないし、そもそも陸斗は女の顔なんて覚えてなどいない。覚えていない以前に、顔を見てさえいない場合も多い。  では何故、子供の顔をまじまじと見つめているのか。  別に子供に興味は無い。  ただ、海里(かいり)の面影を子供に探していた。  別に海里の不貞を疑ってなどいない。疑う余地などなく、信じている。  それは盲信と言われても良いほどに、陸斗の人を信じる気持ちは全て、海里にのみ向けられていると言って過言でない。  ただ、海里はやさしい人間なのだ。やさし過ぎる人間なのだ。  たとえば、泣き崩れた女が迫ってきたら。押し切られる可能性は否定出来ない。それに、陸斗は自分と付き合う以前の海里について、全てを知っているワケではない。  自分と付き合って以降の不貞を一切疑っていないにせよ、数年前に何があったのかを全て知ってはいないのである。  そして、そんな可能性を考えてしまうには、海里が落ち着き“過ぎ”ている様にも思えた。

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