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 誰だって見ず知らずの子供が突然家の前にいれば、驚くだろう。  陸斗(りくと)の言い方は多少横暴だろうが、あっさりと受け入れるよりは「これは何だ」と驚いてしまう方が自然ではなかろうか。  少なくとも、思わず漏れ出た陸斗の発言を咎めて、今は子供と目線を合わせて何やら親身になって話すというのは、難しい様に思う。  冷静過ぎないっすか?  海里(かいり)の事は信じている。信じているけれど、ただでさえ、泣き付かれれば絆されてしまいそうな、やさし過ぎる人間が、この事態に冷静だと。  信じていても、信じたくても、ちらっと思ってしまうのだ。脳内には「もしかしたら、海里がオレと知り合う前に作った子供なのかも」「もしかしたら、海里が、泣き付かれて」「もしかしたらオレへの当てつけで女の子に迫られて」と、嫌な考えばかりが浮かんでくる。  だからこそ、少しでも多く、海里と子供の似ていない点を探そうとしていたのだが、そういった時程、決まって、似ていない部分よりも似ている部分が目に入ってしまう。  その似ている部分が大分強引であったり、そこまで珍しい点じゃなくても、「ここが似てるから、もしかしたら」って。たとえば、目が大きいとか。二重だとか。似ていない部分を探したい筈が、こじ付けの様な類似点で。  似ていない部分を探したいというのに、似ている部分をこじ付けてしまっている。  これじゃキリがないっすね。  陸斗は髪をぐしゃりと掻き上げて、内心で溜息を漏らした。 

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