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「バレちゃった? オレは後輩のことって、結構どーでも良いんだぁ。せいぜい頑張ってりっくんを口説いて、りっくんの気持ちを惹きつけて、海里 からの関心を逸らしてくれれば良いのになぁって思ってるだけだよー」
るん、なんて、語尾に音符が付きそうで。歌うような言い方で、柚陽 はためらいなく言い放つ。
なんて言うか、「コレ」が柚陽なんだろうけど、柚陽にとってはコレでまっすぐなんだろうけど、「相手を傷付けてでも」って発想がなければ、普通の片想いなのに、なぁ。
そんな風にぼんやりと思う反面、後輩の、紗夏 のことさえ「どーでも良い」って言い放った柚陽に、やっぱり怒りは感じられるワケで。
だけど紗夏のことを知らないと言い張った以上、下手に庇うことも出来ない。
つーかボロが出たらオレだけじゃなくて、紗夏に迷惑がかかりそうなんすよね。そうなったら海里を助けてもらえなそうっていう打算もあるんすけど。意図的であったとしても、これこそ柚陽や紗夏の狙いであったんだとしても、ドアスコープ越しに見えた紗夏の、どこか海里に似た雰囲気は、切り捨ててしまえなくて。
紗夏が語った柚陽の気持ちを、「知ったこっちゃないっす」なんて冷たく踏みにじれなくて。そりゃあ、やっぱこっちにも、「柚陽が紗夏とくっついてくれれば、海里が危険な目に遭わない」っていう打算があるんすけど。でも。
陸斗 は、思わず、というように、堪えずに溜息を1つ漏らした。
「なんつーか、アンタ、可哀想な人っすね」
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