346 / 538
11
「だからオレは諦めないよ。海里 は絶対、絶対オレのにするって決めてたんだもん!」
にぱっ、なんて明るく笑ってみせる柚陽 は、表情だけ見ていれば幼い子供だろう。まだ恋も愛も知らなくて、綺麗な世界だけが全てな、小さい子供。
口にする言葉はだいぶ身勝手だけど、本日はただただ真っ直ぐな片想いだ。でも、今度こそ海里を守りたいから、柚陽のやろうとしていることを見逃せはしない。
もしかしたら、そんな綺麗なものじゃなくて、醜いし、資格もない、嫉妬かもしれないっすけど。
「オレも、海里に幸せになって欲しいんすわ」
「あんなコトしたのに、自分が幸せにできるって思ってるなら、りっくん、図々しいよ?」
「アンタもじゃないっすか。……それにオレは海里が幸せになってくれれば良くて、オレが幸せにする、なんてうぬぼれてはいねぇっす」
「オレのコレは愛だもん。憎しみをぶつけた、りっくんとは違うよ?」
「そうっすね。でもオレは、海里をアンタから守るんすわ」
情けないことに陸斗 の声は震えていた。それでも震えているなりにきっぱりと言い切れば、柚陽はびっくりしたぁ、とでも言うように目を見開いた。
それから少し泣きそうに、眉を垂れ下がる。
「じゃあ、オレの後輩はりっくんに想いを通じることなく終わっちゃうんだ」
もちろん、「想い人はアンタっすよ」なんて言える訳がない。「悲しいよー」なんて言う柚陽に思わず「嘘つき」と呟けば、えへへー、明るく笑って、くるっとその場で1度まわってみせてなら、柚陽はもう、満面の笑顔を浮かべていた。
ともだちにシェアしよう!