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「はぁはぁ……」 「なぁ。もう一回いい?」 髪を撫でながら聞いてきた 「むっ、無理!」 「じゃあ。その気にさせないとね」 親指で唇をなぞった後、軽くキスされた 口に緑川の舌が入ってくる 優しく頬を撫でながら、俺の口の中を探ってくる 「ねぇ。碧?」 「…………なんだよ」 「俺の事も、名前で呼んで」 「……」 「下の名前、知らない?」 「知ってるけど……」 「呼んで」 「……た」 「………」 「た…………」 「なんだよ。もどかしーな!」 「うるせー!た、た………環……」 ものすごい小さな声で言った なんか恥ずかしくて……… その時、ふと目があった 目尻が下がって口元が緩んでる ………嬉しそうな顔 な、なんだよ。その顔! 俺に名前呼ばれたくらいで、何をそんなに嬉しそうに……… 「お前、本当に可愛いな。 名前呼ぶくらいでそんなに照れんなよ」 ち、違…… お前が嬉しそうな顔してるから…… ……してるから、何? わーー! 嬉しそうな顔してるから、なんだ!? ……もう、なんか嫌だ!! 「どうしたの?碧。すげー可愛い顔してる」 いつの間にか、距離を詰められる 「可愛くない!」 「…………キスして。碧」 「な、なんで、俺が……」 環は目をつぶった 長いまつ毛 薄い唇 サラサラのダークブラウンの髪がエアコンの風で揺れた そっと環の頬に手を寄せる 脅されてるから、仕方なくやるんだ……… 心の中でそう言い訳をしてキスをした

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