81 / 266

置いて行かれた なんとかく帰るのは悔しくて、そのまま、もう一度座って待った 帰ってきたのは二時間くらいした後だった 「なんで、まだいるんだよ…………」 「……話くらい聞けよ……」 そう言って立ち上がる 「俺には、話なんてない」 環は俺の横をすり抜けて鍵を開けた 「待てってば!」 バタン カチッ 目の前でドアを閉められる 「お、おい!開けろよ!!」 ドンドンとドアを叩いた 「近所迷惑!」 中から聞こえる迷惑そうな声 「とりあえず!開けろよ。環!雪村とは……」 「帰れ!」 「環……」 「帰れよ」 完全な拒否 俺の言葉なんて何も届かない 二時間も待ってたのに………… じわっと目に涙がたまる なんで、全然聞いてくれないんだ ゴシゴシ スーツで拭いたけど、それでも涙が溢れてきた 話は聞いて欲しいけど、こんな顔見られたくない 仕方なく帰ることにした 途中、何度も振り返ったけど、ドアは開かない 悔しくて悲しくて、グチャグチャな気持ちのまま、階段を降りた 外へ出ると、雨が降ってきた ちょうど良い…… 雨に濡れて歩いた これなら、誰にも泣いてる事、気付かれない なんで涙が出るのか、分からない 次から次へと溢れてくる 環……聞いてほしかったよ

ともだちにシェアしよう!