47 / 64

第47話

「……どうして?」 驚いてるティアに疑問を投げつけたのは俺……。 「虹……。」 「ティアは俺に何か隠してるよね?」 ガバッとベッドから立ち上がってティアに詰め寄る。 「……。」 ふぅ……と深いため息を吐いて観念した様子で俺の肩に優しく触れ、ベッドサイドに座らせる。自らは跪く姿勢で俺と目を合わす。 マゼンタ色の瞳に少し寂寥感が滲んでいる。 「あのね……。虹聞いて。」 俺の手を服越しから握り力を込める。 「…………僕、今…発情期なんだ。」 ────! 「え?」 俺の言葉を制するようにティアが続ける。 「人工母胎から産まれたヒュームのパートナーが居る男性は発情期があるの知ってる?」 「……うん……。女性にはないって…聞いた。」 「そう、本来発情期が重ならないと受胎は起こらない。ヒュームの女性は元々その機能は衰退してしまっているんだよね。男性にだけ未だ残る発情期には、抑制剤を飲み過ごすのがパートナーに対するエチケットなんだよ。」 片方にだけしか現れない発情期。 人類はそうして受胎の機会が失われていってる俺たちの世界……。 「……どうして?抑制剤なんて飲むの??」 「それは……パートナーに性的な欲求が普段よりキツくなって、負担になってしまわないように、だよ。」 「でも……俺、俺は…ヒュームじゃないよ?」 「それに、Rナチュラルだけど男だし……」 ティアの方に身を乗り出して胸に手を当てる。想いを伝えたくても言葉が続かない……。 「僕もパートナーをもって初めての発情期だから、どうなるかわからなくて、怖いんだ。」 「虹に手荒な事はしたくないし…わかってくれるよね?」 俺を胸から引き剥がすティアの手が震えている。心無しか呼吸も浅い。発情期ってRナチュラルにもあるって聞くけど…辛いのかな……。 「……俺!ティアになら、何されても平気だよ?……ティアは……辛くないの……??」 深呼吸をして、目を伏せるティアの姿がすごく艶めいている。 「……虹に触れたい。けど、まだ……今はダメ。5年も待ったからね。後数日くらいなんて事ないよ。」 俺だって……ティアに触れて欲しいし……触れたい。 「俺は、手荒な事をされるとか、どんな事をされたってティアと離れてるよりはいい!」

ともだちにシェアしよう!