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第47話
「……どうして?」
驚いてるティアに疑問を投げつけたのは俺……。
「虹……。」
「ティアは俺に何か隠してるよね?」
ガバッとベッドから立ち上がってティアに詰め寄る。
「……。」
ふぅ……と深いため息を吐いて観念した様子で俺の肩に優しく触れ、ベッドサイドに座らせる。自らは跪く姿勢で俺と目を合わす。
マゼンタ色の瞳に少し寂寥感が滲んでいる。
「あのね……。虹聞いて。」
俺の手を服越しから握り力を込める。
「…………僕、今…発情期なんだ。」
────!
「え?」
俺の言葉を制するようにティアが続ける。
「人工母胎から産まれたヒュームのパートナーが居る男性は発情期があるの知ってる?」
「……うん……。女性にはないって…聞いた。」
「そう、本来発情期が重ならないと受胎は起こらない。ヒュームの女性は元々その機能は衰退してしまっているんだよね。男性にだけ未だ残る発情期には、抑制剤を飲み過ごすのがパートナーに対するエチケットなんだよ。」
片方にだけしか現れない発情期。
人類はそうして受胎の機会が失われていってる俺たちの世界……。
「……どうして?抑制剤なんて飲むの??」
「それは……パートナーに性的な欲求が普段よりキツくなって、負担になってしまわないように、だよ。」
「でも……俺、俺は…ヒュームじゃないよ?」
「それに、Rナチュラルだけど男だし……」
ティアの方に身を乗り出して胸に手を当てる。想いを伝えたくても言葉が続かない……。
「僕もパートナーをもって初めての発情期だから、どうなるかわからなくて、怖いんだ。」
「虹に手荒な事はしたくないし…わかってくれるよね?」
俺を胸から引き剥がすティアの手が震えている。心無しか呼吸も浅い。発情期ってRナチュラルにもあるって聞くけど…辛いのかな……。
「……俺!ティアになら、何されても平気だよ?……ティアは……辛くないの……??」
深呼吸をして、目を伏せるティアの姿がすごく艶めいている。
「……虹に触れたい。けど、まだ……今はダメ。5年も待ったからね。後数日くらいなんて事ないよ。」
俺だって……ティアに触れて欲しいし……触れたい。
「俺は、手荒な事をされるとか、どんな事をされたってティアと離れてるよりはいい!」
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