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第7話

「会長さん、こんにちは」 「ああ」 「俺もいいの?」 「……別に。いつも椿沢と一緒にいるだろう」 「そうだけど。……でもサンキュ」 「……」 そう言うと渚は副会長の椿沢や書記たちのところに戻っていった。 渚と喋れたことに舞い上がりそうで顔が緩みそうになるが今は必死で耐える。 今ここに居るのは俺と渚だけじゃないからな。 「これ全部寄付なのー?」 会計の伊野の声に俺はみんなを見て頷いた。 「そうだ。勉強と仕事ばかりで運動がおろそかになってるからな。体力作りも必要だと父が贈ってくれたんだ」 ここ―――生徒会室の隣の部屋には昨日までなかった器具がいくつも置かれていた。 エアロバイクやベンチセットなどのトレーニグ器具にマッサージチェアもある。 それにあと―――ロデオマシーン。 「確かに身体が鈍っているのはあるな。お前らの場合」 「そうでもないですけどね。それよりなぜ風紀までいるんです」 「この一部はうちの三宮の提供もあるからな」 「……貴方の場合魂胆見え見えですけどね」 「なんだと?」 「うるさいぞ」 副会長と風紀委員長が言い争うような気配だったから即座に遮る。 前から副会長と風紀委員長は性格が合わないのか顔を合わせればケンカ腰な感じだった。 それにしても―――本当に勢ぞろいだ。 俺の目当ては渚だけで、ロデオに乗っている姿も渚にだけ見せたかった。 のだが……結局挨拶以上の話を渚と交わすこともできず、情けないことに俺から声をかけることもできなかった。 そこでどうすれば渚に見てもらえるかを考えた結果トレーニングルームを作りそこにロデオマシーンを設置すればいいのではないかと思い至ったわけだ。 だが渚と二人っきりになれるとも限らないし、どうせ副会長たちも一緒にいるのだろうし。 俺は練習の成果を早く渚に見せたかったのもあって、トレーニングルームのお披露目の際にロデオマシーンに乗ることに決めた。 和佐からは最後まで反対されたが。 そしていまここには生徒会メンバーだけでなく風紀委員長と副委員長である和佐が集まっていた。 「これ自由に使っていいんだよねー」 「ああ」 「ムキムキになっちゃったらどーしよー!」 双子書記は目を輝かせ室内を見渡している。 「……どれも最新のだ。とくにアレは――」 さりげなく、さりげなくロデオマシーンのもとに歩み寄る。 正直に言えばいまだかつてなく俺は緊張していた。 渚以外のメンバーは眼中にないし、やつらも俺の行動など気にも留めないだろう。 俺の意識はすべて渚だ。 渚に醜態は見せられない。 和佐の部屋でロデオに乗ったあの日から早2週間。 毎日続けた特訓の成果をみせるんだ。 「このロデオマシーンは最新のものだ。……乗ってみるかな」 さりげなさを装い、 「みんなも好きに使ってみればいい」 と促しつつロデオに跨った。 ちらり見れば渚は俺の方を見ている。 グッと心の中でガッツポーズをし、俺はロデオのスイッチを押した。 押す瞬間、このロデオが和佐の部屋にあったのとは違うということに気づきながら。 ボタンの種類が多いな―――と思いながら。 ウィィィィ―――ンと静かな振動のあと、適当に押したボタンとともに、ロデオは動きだしたのだった。 ***

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