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【エピローグという名のプロローグ】

目を開けると白い天井が映った。 消毒液の匂いを感じる。 どこだ、ここ? そう思ったとたんに影が落ち、顔をのぞきこまれた。 「あ。起きた」 「――……っ!?」 慌てて跳ね起きる俺の目の前には渚がいた。 「な。な!?」 「あれ、覚えてねーの? 会長、ロデオマシーンから落ちて気絶しちゃったんだよ」 「え……そ、そうなのか」 そういえば最新式のロデオに振り回され醜態をさらしてしまった記憶がよみがえる。 情けない、いくら和佐の部屋のロデオと型が違ったといってもあんな姿を晒してしまうなんて。 だからあんな―― 『バカっぽいんだな』 なんていうことを渚に言われてしまったんだ。 「おい、大丈夫? 顔真っ青だぞ? いま校医職員室行ってるんだけど呼んでくるから」 心配そうな声が落ちてきて、渚が椅子から立ち上がる。 俺は反射的にその手を掴んでいた。 「だ、大丈夫だ」 「でも」 「な――……緑里」 「なに?」 バカっぽいと思われたのは心外だし、どうして渚が俺に付いててくれたんだろうというのも不思議ではある。 だがいまこうしてごく自然に話しかけてくれるのが嬉しく俺は言わずには居られなかった。 「緑里、お、お、俺と」 「うん?」 息を深く吸い込み、 「友達になってくれ!」 叫んだ。 遠く、たぶん廊下のほうで「違うだろ!」とよく知った声が響いてきたけどいまはそれどころじゃない。 必死に渚を見上げ見つめると、渚はきょとんとしたあとに顔をほころばせた。 「もちろん。いーよ」 屈託のない笑顔は眩しく輝いていて俺は見惚れてしまう。 「よろしくな。えーと……日向?」 照れくさそうに笑って会長ではなく俺の名前を呼んで、そして手を差し出してくる渚に俺はその手を握って。 「……よろしく、緑里」 第一歩を踏み出したのだった。 【ロデオでフラグ!! END】

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