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act.2追憶プレリュード<91>*

「も、しちゃ、だめ。アオ、約束ね」 鎖骨まで下ろした唇の次なる行き先は胸元ではなく、腕に決めた。京介からエロ猫だと馬鹿にされるが、本来の目的はちゃんと覚えている。 腕に広がる傷を啄むように舐めていけば、葵が悲しそうに顔を歪める。 「俺を、噛んで」 「そんなこと出来ないよ」 「平気。アオの、もの…だから」 葵の体に傷がつくぐらいなら喜んで自分の身を差し出すというのに、都古の切なる願いはより葵を悲しませてしまったようだ。さっきとは違う涙が葵の目に溜まりだしてしまう。 「アオが、痛いの…つらい。俺だって、ヤダ」 都古は腕から唇を離すと、葵と真っ直ぐに目を合わせるため覆い被さるような体勢をとった。 「寂しいのも、ヤダ。俺が、いるのに」 冬耶と遥が卒業してから葵の様子が不安定になったこともこの機会に本心を告げておきたい。最近はライバルも増えて、葵とゆっくり二人きりになれる時間などなかなか作れないのだ。 「みゃーちゃんはみゃーちゃんで…お兄ちゃん達とは、ちがうよ」 「俺だけ、欲しがって」 葵を困らせる願望なのは百も承知の上。でも分かって欲しい。都古は息ができなくなるほど葵が好きで、葵が居なければ何も出来ない。 それなのに可愛いご主人様は、都古以外の大切な存在をどんどん増やしていって、振り回されて、恋しがって、寂しがって、時に傷ついてさえいる。 京介も、そして冬耶も遥も、葵にはそうした”友達”や”先輩”や”後輩”、なんていう者が必要で見守るべきだと言ってくるが都古は納得が行かなかった。 「マーキング、しないと」 「んッ…みゃーちゃん、だめ」 「ヤダ、する」 チュッと葵の唇に短いキスを落とした都古は、今度は腕ではなく胸元へと唇を滑らせる。 なんとか頭を離させようと、葵が都古の頭に手を添えて引き剥がそうとしてくるが、乱暴に出来ずに最低限の力しか入れてこないような抵抗などあってないようなものだ。 「ココ、好き」 「あッ…ん、ン」 辿り着いた胸の突起をぺろりと舐めあげれば、葵からは予想通り愛らしい声が上がる。だが、恥ずかしいのか、それともここが誰の部屋のバスルームか思い出したからか、葵は唇をギュッと噛み締めて声を我慢し始めた。 「アオ、これ、噛んで」 本当なら我慢させずにその声までしっかり堪能したいところだが、聞きつけた櫻にこの甘い時間を邪魔されるほうが困る。都古は葵の下敷きにしている自分の浴衣の袖部分を葵の口元に差し出し、それを噛むように促した。

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