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第1話
それは突然の出来事だった。
僕は横たわる2人のそばに佇み眺めていた。
何が起きているか理解ができなくて2人を眺めている事しか出来なかった僕。
「うぎゃ〜ぁぁ!」
火がついたように泣き出す兄夫婦の子供。
それでも僕はうるさいとも感じれなくて周りの音なんて何も聞こえていなかった。
微笑んで手を振り仲良く出かけて行った2人がもう目を覚まさないなんて信じられない。
僕は・・・また1人ぼっちになった。
僕達の両親は僕が小学6年で兄が大学1年の時に車の事故で亡くなった。
それから兄は周りの言うことも聞かないで大学に通いアルバイトをしながら両親が残してくれた貯金や保険金でなんとか兄弟力を合わせて生活して来た。
贅沢は出来なかったがすごく幸せだった。
そんな兄が僕が社会人になるとすぐに以前から付き合っていた彼女と結婚して男の子を授かった。
これから、これから家族で幸せに暮らして行くはずだったんだ。
「ねぇ、いつまで寝てんだよ。2人して早く起きてくれよ」
「ぎゃあっ!ふっぎゃあぁぁ!!」
「起きてくれなきゃ・・・幸大(こうた)が泣き止まないんだよ」
僕はもう目を覚まさない2人にずっと言い続けた。
頭では理解をしているが心が追いついていない。
泣きながら暴れ出す幸大を落とさないようにぎゅっと抱きしめていた。
そして幸大の温もりでハッキリした事は一人ぼっちじゃない幸大がいるんだという事だった。
幸大、僕が守るよ。
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