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ぬくもりside:シルバ⑦
太陽君は動けない僕の前に立ち塞がると、ぐるるるるっ と威嚇の声を上げた。
毛が逆立ち、上体を低くして戦闘態勢に入っている。
「シルバ、動ける?」
「…ごめん、だめ。太陽君、早く逃げてっ!」
動かない俺達の様子を見た男達は
「…どうした?恐怖のあまり動けないのか?」
なんて余裕ぶった声を掛けてくる。
ボスは薄ら笑いを浮かべ僕達をじっと見ていた。
「僕のために、太陽君まで売られてしまう!
そんなのダメだ!
今なら間に合う!
早く逃げてっ!!!」
そんな願いも虚しく、太陽君は僕を庇い動こうともしない。
ぴんと張り詰めた空気の中、男達が何やら相談していたが
「俺一人で捕まえるから待っててくれ。」
「大丈夫なのか?」
「二匹とも動けない。大丈夫だ。」
寝ていた男が一人で近付いて来た。
隅っこに追い詰められ、もうダメだと思った時、男がささやいた。
「助けてやるから心配するな。
俺は潜入捜査の人狼警察官だ。」
え?潜入捜査?人狼警察?
抵抗を止め、驚く僕達をふわりと抱き上げ
「いいか、大人しくしてろよ。」
と念押しすると、あの二人の元には戻らず、あっという間に金属のコンテナの裏に滑り込んだ。
と同時に左手の薬指に光る指輪に向かって大声で叫んだ。
確保ぉーーっ!突入ーーーーっ!!!
うおぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!
地鳴りのような大声とともに、一体何処に隠れていたのか、倉庫のあちこちから警官が雪崩れ込んできた。
全員が銃口をあの二人に向けている。
「観念しろ!全て包囲されている!
大人しく拳銃を捨てて両手を上げろっ!!」
思ってもない予想外の展開に、僕達は警察官のムキムキの腕の中で固まっていた。
でも、その腕と胸の温もりに安心した僕達は顔を見合わせて大きく息を吐いた。
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