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ぬくもりside:シルバ⑥
太陽君は鼻先で器用にケージのフックを外してくれた。
唯一空いた小さな扉から、僕は一目散に飛び出した!
…無言で目の前の愛おしい番に身体を絡め舐め合い、匂いを嗅ぎ合った。
鼻先を擦り合わせ、大きく息を吐いた。
太陽君、ホントに来てくれた…
視線を落とした先に、傷だらけの前足があった。
ぶわりと涙が溢れていく。
こんなに…こんなに…いっぱい血が出て…それでも僕を助けに来てくれた……
太陽君が僕の耳元でささやく。
「いいか、シルバ。ここを脱出する。
今がチャンスだ。俺の後について来て!
出来るだけ音を立てないように。」
僕は涙目で、こくこく頷いた。
一つ目の影になる場所を確認する。
酔っ払った男はまだ机に突っ伏したままだ。
酒を取りに行った男が戻るまでに…
急げっ!!
影に飛び込み、一緒に隠れた瞬間
パァーーーン!!!
数メートル先の木箱が砕け散った。
驚いてその場に立ち尽くし、振り返ると、さっきの男とは違う奴が、俺達に何か黒い物を向けていた。
その先からは白い煙が上がっている。
撃たれた!?
殺される!!!!!
身体が震えて腰が抜け、その場から動けなくなった。
遠過ぎて顔は分からないが、ソイツはゆっくりと近付いてくる。コイツが…ボス?
男達が何だか揉めている。
今の間に、太陽君だけでも逃がさなきゃ!
「太陽君、早く逃げてっ!
僕は大丈夫だからっ!早くっ!」
精一杯頭を伸ばして、鼻先で太陽君をぐいぐい押し出した。
早く、早く逃げてっ!!!
僕のことなんて構わなくていいからっ!!!
「ばかっ!お前を置いて逃げれる訳ないだろっ!」
太陽君が叫ぶ。
そうしている間に、ジリジリと男達が迫ってくる。
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