265 / 337

ぬくもりside:シルバ⑥

太陽君は鼻先で器用にケージのフックを外してくれた。 唯一空いた小さな扉から、僕は一目散に飛び出した! …無言で目の前の愛おしい番に身体を絡め舐め合い、匂いを嗅ぎ合った。 鼻先を擦り合わせ、大きく息を吐いた。 太陽君、ホントに来てくれた… 視線を落とした先に、傷だらけの前足があった。 ぶわりと涙が溢れていく。 こんなに…こんなに…いっぱい血が出て…それでも僕を助けに来てくれた…… 太陽君が僕の耳元でささやく。 「いいか、シルバ。ここを脱出する。 今がチャンスだ。俺の後について来て! 出来るだけ音を立てないように。」 僕は涙目で、こくこく頷いた。 一つ目の影になる場所を確認する。 酔っ払った男はまだ机に突っ伏したままだ。 酒を取りに行った男が戻るまでに… 急げっ!! 影に飛び込み、一緒に隠れた瞬間 パァーーーン!!! 数メートル先の木箱が砕け散った。 驚いてその場に立ち尽くし、振り返ると、さっきの男とは違う奴が、俺達に何か黒い物を向けていた。 その先からは白い煙が上がっている。 撃たれた!? 殺される!!!!! 身体が震えて腰が抜け、その場から動けなくなった。 遠過ぎて顔は分からないが、ソイツはゆっくりと近付いてくる。コイツが…ボス? 男達が何だか揉めている。 今の間に、太陽君だけでも逃がさなきゃ! 「太陽君、早く逃げてっ! 僕は大丈夫だからっ!早くっ!」 精一杯頭を伸ばして、鼻先で太陽君をぐいぐい押し出した。 早く、早く逃げてっ!!! 僕のことなんて構わなくていいからっ!!! 「ばかっ!お前を置いて逃げれる訳ないだろっ!」 太陽君が叫ぶ。 そうしている間に、ジリジリと男達が迫ってくる。

ともだちにシェアしよう!