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ぬくもりside:シルバ⑤
それからお酒が程よく回ったのか、『先輩』はご機嫌で、自分の家族のことや身の上話をしていた。
そのうち
『こんな犯罪に手を染めることになって、今は後悔している。人狼だとはいえ、家族から引き離すことになって悪かった。
海外に売り飛ばした子供はどうなったんだろう。
コイツにも、弟が妹が生まれるはずだったんだよな…』
と言って泣いていた。
若い男はふんふんと相槌を打ちながら、聞き役に回っていた。
僕はその間に、何とかケージから抜け出せないか、音を立てずにいろいろ試してみたが、扉はビクともせず、そのうち疲れてきた。
絶望で、蹲って丸くなる。
何処に連れて行かれるのか。
海外だったらどうやって日本まで戻ればいいのか。
他の子達と一緒にされないのはどうしてなんだろう。
ママは生きてるんだろうか。
黒曜は………
考えれば考えるほど怖くなり、身体が震えてきた。
ママ…黒曜…………太陽君…
もう、もう二度と会えないんだろうか…
嫌だ…嫌だ…誰か、誰か助けてっ!
太陽君のことを思ったからなのか、ふわりと大好きな匂いがした。
ぴんと耳を立て、ふんふん と鼻をヒクつかせる。
…いる訳ないよ。こんな所に。
一回だけ…ぎゅってしてほしかったな…
また、涙が出て出てきた。
突然、ぶわりと濃い太陽君の匂いがした。
「シルバ、シルバ!」
ささやき声に、えっ!?と思ってびくっと身体が跳ねた。
まさか…ゆっくりと目を開き顔を上げた。
ケージ越しに、大好きな番がいた。
これは…夢?
「…嘘…太陽、君?」
「しっ!声出しちゃダメ!」
制されて、びくっとした。
本物だ…夢じゃない…
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