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ぬくもりside:シルバ④

間もなく戻ってきた男は、どっかと椅子に座ると 「どうぞ。」 と年上の男に勧めた。 「おっ、サンキュ。」 プシュッ プシュッ 「もう一仕事残ってるけど、一杯くらいならいいだろ。 ま、取り敢えず乾杯だな。 ほい、お疲れさん。」 「お疲れ様っす。」 「はぁーーっ、美味(うめ)ぇっ…… ……こんなこと、飲んで忘れなきゃやってられねぇよな。」 「いつ頃から?」 「一年くらい前か…仕事を探してる時に、金になる仕事があるって組の人間から紹介されて… 確かに破格の値段だった。」 「組…ヤクザか…なぁ、あんた人狼か?」 「いや、俺は人間だ。まさかこの世の中に人狼がいるなんて夢にも思わなかったんだ。 最初は獣化した状態ばかりを連れ去ったから、罪悪感も何もなかった。 害獣の駆除…化け物退治だとも思ってた。 でも、今回は…コイツの泣き叫ぶ声が耳から離れねぇんだ。 あんな血に塗れた人間もみたことがなかったし。」 「ボスってどんな感じなんだ?人狼か?」 「いや、人間だ。聞くところによると、どっかの会社の社長らしい。 異常に人狼を憎んでるけど、こんな無茶は今までしたことがなかったんだ。 …何か焦ってるような、()いているような…状況が変わったのか… 何せ、この仕事もそろそろヤバいな。 お前も、ちょっとはマシな違う仕事探した方がいいぞ。」 「…そうか。やっと仕事にありつけたと思ったんだけどな… 送り出すには、まだ時間があるじゃないか。 まぁ、飲んで忘れろよ。 俺が見張っとくから…さ、飲んで飲んで!」 「…そっか?んじゃあ遠慮なく… …はぁっ…腹に染み渡るなぁ…」

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