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ぬくもりside:シルバ③

あんまり詳しいことは知らない風の若い男が 「なんでこいつだけ、ここにいるんだ? 何か特別なのか? 売り飛ばすなら、今あっちにいる子供と一緒にしとけばいいじゃないか。 その方が面倒じゃない。 纏めて見張っておけばいいんじゃないのか?」 僕のこと!? 心臓がドキドキしてきた。 「俺もよく知らないんだが…こいつだけ別の所に売られるんじゃないか? …行き先も聞いてないんだが… それにしても、他の子供と特に変わりはないようなんだがな。 ボスが 『絶対に殺すな』 って言ってたからな。何か訳ありなのかもしれねぇよ。」 「ふーん…そうなのか。ま、特別ってことか。 それより、酒を買ってきてるんだが、一杯どうだ?取り敢えず上手くいったということで。」 「おっ、今時の若い(もん)にしちゃあ気が利くじゃねぇか。 じゃあ、前祝いでいただくとするか。」 「ツマミもあるんで。」 「お前、見かけによらずいい奴だな。 見直したよ。」 「あざぁーす。ちょっと取ってきますわ。」 若い男が出て行った。 僕だけ…別の所に? 『特別』って何だろう… やっぱり逃げなきゃ! この扉を開けなきゃ! …でもケージの網目は小さ過ぎて、前足も鼻先も入らない… 人型になったら、身体がケージに合わなくて大変なことになってしまう。 一体どうしたらいいんだろう… ママ…黒曜… 事故に遭った時の、全く動かない黒曜と、段々冷たくなっていくママの、あの姿が、あの薄れていく体温が、蘇ってきた。 きゅぅ… 小さな小さな鳴き声が溢れた。 ママ…ママ…黒曜…助けて…

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