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ぬくもりside:シルバ②
僕は机の下のケージの中で、男達の足しか見えない。
一人…二人…
きっと、僕を車から誘拐した男達だ!
ぼそぼそと話し声が聞こえる。
「…命令だとは言え、何だってあんな急ぎの拉致をしなきゃならないんだ!?
あんな目立つ所で。
しくじって、子供しか攫えなかった…身重の方は…死んだかもしれんな、重体だってニュースで言ってたから。
ボスも何考えてんだか…
みんな見てたぞ!?
顔バレしたらどうするんだよっ!
今までうまくやっていたのに…」
「子供を救助したと思ってるよ。
…なぁ…『今まで』って、何人くらい拉致したんだ?」
「四人は海外へ売った。
三人は別室に閉じ込めてある。今夜の便で売りに出すんだ。
ヨーロッパ辺りで需要が多いらしい。
結構な値段で売れるらしいからな。」
「人狼の子供を買ってどうするんだよ?」
「人間と一緒だよ。最近は子供が出来ないカップルが増えてるらしくてな。
需要と供給。上手い世の中だよ。」
「ボスって…俺もボスに会えるかな?」
「滅多に人前に出てこないからな。
しっかり働いていればその内、声がかかるだろう。
まぁ、頑張りな。」
「あぁ、頑張るよ。先輩、いろいろ教えてくれよな!」
「『先輩』って…何か擽ったいなぁ。」
あははっ と上機嫌な男の笑い声がする。
身重の方?重体?まさか…ママ!?
ママ…ママ…お願い、無事でいて…
ポロリ
ポタ…ポタ…と足元に乾いた音が聞こえる。
泣いてちゃダメだ。
ここから逃げなきゃ。
でも、人型に戻るのは無理だ。ケージが小さ過ぎる。
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