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収束⑤

黒曜さんのオーラが怒気を纏ってきた。 「…許さない…白磁だけでなく、銀波、そして輝までも… 極刑だろうが何だろうが関係ない、俺が息の根を止めてやる…」 俺は黒曜さんに縋り付いた。 「黒曜さんっ!ダメっ! そんなことしたら、あなたはアイツと同じになってしまうっ! 悔しいけど、辛いけど…ダメだ…」 ぐっと黒曜さんの手が握り締められ、ぶるぶる震えている。 俺は黒曜さんを抱きしめて、背中を撫で、ダメだと繰り返しささやいていた。 くっ… 黒曜さんの食い縛った口元から、嗚咽が漏れてきた。 …黒曜さん? くっ…んっ……ぐうっ… あぁ…黒曜さんが…いつも強い黒曜さんが泣いている… あんな男に…悔しいよね、憎いよね… 俺はただ、目の前の愛おしい(ひと)を抱きしめて、一緒に泣いた。 白磁さんの仇を討ちたいのも分かる。 でも、手を掛けたらあんなヤツと同じになってしまう。 負のエネルギーを連鎖させてはダメだ。 辛いけど、悔しいけどここで断ち切らないと。 力一杯、黒曜さんを抱きしめる。 俺と…シルバと…新しく授かった命が、黒曜さんを守るから。 だから、だから、手を出しちゃダメだ。 俺達は白磁さんの分まで、真っ直ぐ生きていくんだ。 白磁さん、黒曜さんを助けて! 力を貸して!お願い! どのくらい経ったのか。 泣き続ける俺の髪を優しく撫でる感触に気付いた。 ふと顔を上げると、真っ赤な目のまま微笑む夫がいた。 「黒曜さん…」 俺の頬や目尻に溜まった涙を拭うと 「輝、ありがとう。」 ひと言だけそう言って、俺をそっと抱きしめた。

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