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収束⑥

黒曜さんは落ち着いていた。 さっきの取り乱し方が嘘のように。 課長は 「余罪も数え切れない程あるし、人狼犯罪史上最大の極悪人だからな。 君達の心が晴れるわけではないが…極刑は免れないだろう。 須崎さん、悔しいだろうが、後は警察に任せてくれないか?」 黒曜さんは、きっちりと頭を下げて言った。 「はい。よろしくお願いします。」 それを見てホッとひと息ついた俺も頭を下げた。 「さ、これで事情聴取は終わり。 銀波ちゃんもお待ちかねだよ。」 課長と黒曜さんが固く握手をしている。 まだどこか夢を見ているような心地の俺は、黒曜さんと並んで隣の部屋へシルバを迎えに行った。 そっとドアを開けると、静かにお絵描きをしていたシルバが俺達に気付いた。 「ママっ!」 飛び付いてきたシルバを抱きしめて「いい子で待てたな」と褒めてやった。 くふんと恥ずかしそうに笑うシルバを黒曜さんが優しい眼差しで見ている。 「銀波ちゃん、お利口で待ってましたよ。 あ!絵本もお絵描きセットも、良かったら持って帰って! 銀波ちゃん、また遊ぼうね!」 「お姉さん、ありがとう!」 「ありがとうございました。 ご迷惑をお掛けした上にお土産まで…」 「いいんですよ。喜んでもらえたら。」 三人でお礼を言って、署を後にした。 こんな大事件の後だから、二、三日休むようにと言われ、甘えてそうさせてもらうことにした。 月明かりのお陰で怪我はすっかりと治り、後はメンタルの問題…これが一番厄介なのだが。 とにかくゆっくりと過ごすことにした。

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