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収束⑦

帰りにスーパーで買い物をする。 冷蔵庫にある物を思い出しながら 「ねぇ、今晩は何にしよう?何食べたい?」 「「ギョーザ!!!」」 黒曜さんとシルバの声が綺麗にハモった。 三人で顔を見合わせて、吹き出した。 一頻り笑って 「じゃあ、それにしよう! 足りないのは…ギョーザの皮と挽肉! シルバにもお手伝いしてもらうよ。」 「はーい!」 黒曜さんは、あの時の味が忘れられないんだ とぼそっと呟いた。 “あの時”…シルバが俺に会いたくて家を飛び出し、マンションの玄関で見つけたシルバと、探し回った黒曜さんに食べさせた、あの時の… あぁ…そうなんだ… 愛おしくて、抱きつきたかったけれど、滅茶苦茶我慢した。 シルバがケーキのコーナーから離れなくなって、根負けした黒曜さんが「記念日でもないのに…」とボヤきながら「今日だけ」と念押しして、三人分買ってくれた。 帰り道、思わぬ収穫にご機嫌なシルバは、鼻歌を歌ってスキップしていた。 「甘やかしちゃったかな。」 「初めてじゃないですか?シルバがワガママ言うの。」 「違うよ。『輝に会いたい』って家出したじゃないか。」 「あっ…そうか…でも、今日だけ。ね?」 「…仕方ないな。今日だけだぞ。」 ふふっ と笑いながら黒曜さんを見上げる。 あぁ…こんな幸せが今、ここにあって良かった。 あのままシルバが帰って来なければ、どうなっていたんだろう。 考えるだけで身震いして心臓が止まりそうになる。 あの時…獣化した俺の叫び声を、多くの人狼が、人狼だと自覚のない人間達が、聞いて動いてくれた。 見知らぬ人達、そして人狼警察や太陽君のお父さんをはじめとした村の人達、皆んなに、皆んなに助けてもらった。 「輝?どうした?」

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