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SS:母の日に①
*ゆみ先生目線で*
「はーい、みんなー!
もうすぐ『母の日』がやってきます。
いつもみんなを優しく、厳しく、大らかに育ててくれてるお母さんの顔を描いてプレゼントにしましょう!」
はーーーーいっ!!!
みんな一斉に、白い画用紙に思い思いの色で描いていく。
大きなマルの輪郭…ふふっ。翔太君のお母さん、丸顔の優しい顔だもんね。
あら。千夏ちゃん…細過ぎない?…そうか、お母さんダイエットに挑戦中って言ってたから…ワザとスリムに描いてるんだ。
…それぞれに上手く特徴を掴んでいる絵を見ながら、ちょっぴりホッとしていた。
このクラスは、みんな母親がいるお家の子供ばかりだったから。
『母の日』…お家の事情で母親がいない子供には、辛い日。
同じく来月やってくる『父の日』だって。
こんな時に、そういう家庭の子供に、そして周りの子供達に掛ける言葉をどうするか、いつも悩んでいる。
子供は正直で、時に残酷だ。
思っていることをストレートに言い放つ。
以前“人間”の保育園にいた時には、それがイジメの元になったことがあった。
でも
この村の子達はお互いの家の事情を知っているから、無闇に他人 を傷付けることはないだろうが。
「せんせぇー!できたー!」
あれこれ考えを巡らせていると、一番後ろの席から声が上がった。
一番乗りは絵の得意な昌也君だ。
「どれどれ?あっ、素敵!
昌也君、カーネーションも描いたのね!」
真ん中に大きく描かれた上半身のお母さんは、飛びっきりの笑顔で。
その周りをぐるりと赤いカーネーションが飾られている。
えへん と得意気に胸を張り
「お母さん、絶対に喜んでくれると思う!」
そう言って『おかあさん、だいすき』と付け加えた。
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