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母の日に②
仕上げた子から順番に額に入れていく。
うれしそうに、眺めたり触ったり、友達と見せ合いっこしたり。
「…先生…」
もじもじしながらやって来たのは銀波君。
「はい、どうしたの?」
「あのね、あのね…」
見ると、まだ彼の画用紙には何も描かれていなかった。
「銀波君、描きたくなかったのかな?」
すると、首を横に振り
「違うの。
あのね、先生。
僕…僕、僕を生んでくれたママと、僕をギュってハグしてくれて、美味しいご飯を作ってくれて、とっても優しいママと…ママが二人いるの!
だからね、だから二人とも描きたいんだけど…いいですか?」
あぁ…そうだ。胸がぎゅっと切なく痛んだ。
銀波君の本当の母親は、不幸な亡くなり方をして…父親に至っては、我が子を手に掛けようとした極悪人だ。
伯父にあたる須崎さんがその父親代わりになり、その伴侶の輝さんと愛情を込めて子育てをしている。
「勿論!
どちらのお母さんも喜んでくれると思うよ!
銀波君の描きたいように描けばいいのよ。」
それを聞いた銀波君の顔が、ぱぁーっと輝いた。
「うん!先生、ありがとう!」
急いで席に着いた銀波君は、迷いなくクレヨンを動かし始めた。
その姿を気にしながらも、次から次へと出来上がりを見せにくる子供達に囲まれてしまい、見えなくなってしまった。
一人一人絵を見ながら話し、額に入れてあげると、部屋の中は賑やかさが増していく。
銀波君は集中して描いていた…あの子の周りだけ、静かな時が流れているようだった。
その隣で、太陽君が同じように穏やかに見つめている。
二人のお母さんか…一体どんな絵になるんだろう。
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