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母の日に③

それから程なくして、銀波君が顔を上げた。 満足そうな顔をしている。 描けたんだ。 そっと彼の机まで行くと 「どう?描けた?」 その問い掛けに、描き上げたばかりの銀波君は恥ずかしそうに画用紙を差し出した。 そこには… 笑顔で手を繋ぐ二人のお母さんが描かれていた。 左側のロングヘアーの女性…背中に白い羽と頭には金色に光る輪っかが。これは、亡くなった生みの親の白磁さんだろう。銀波君の中では、天国で天使になってるのね。 右側の少し背の高いショートヘアーは、きっと輝さんだ。 しっかりと繋がれた手の周りには、小さな赤いハートがたくさん飛んでいた。 「二人とも仲良しなんだね、良かったね。 二人から…沢山の愛が生まれてるのね。」 銀波君は、くふん とうれしそうに笑った。 その笑顔は本当にうれしそうで…この子は今、愛されて幸せなんだ…と思えて泣きそうになった。 「…じゃあ、額に入れるね。」 涙を隠すように慌てて額に収めた。 それを受け取り、大事そうに胸に抱えた銀波君に、太陽君が何かささやいた。 見つめ合って、クスクス笑みを交わす幼い番に、暫し見惚れていた。 「せんせぇー!これどうするのー?」 ハッと我に帰り、全員の額入れが終わったことを確認すると 「金曜日にね、ラッピングをします。持って帰ってお母さんにプレゼントしてあげてね。 それまでは後ろの棚の上に飾っておきましょう。」 はーーーーい!! 我れ先にと後ろの棚に突進する子達を太陽君が指示して喧嘩にならないようにしてくれている。 私より余程先生らしいわ。 おかしくって一人で笑っていた。

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