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主従な関係 【赤い糸の行方は】風早健司×林田志乃

赤い糸の行方は より、風早健司×林田志乃 旅行などのレジャー業界に名を馳せる、林田グループ。同業界で知らない者はない大企業だ。 俺はその林田の長男であり、嫡男として育てられた。 行く行くは会社の経営にも携わり、将来的には父親の跡を継ぐ。 有名私立の幼稚舎の頃から敷かれたレールを走るように、付属の初等部、中等部を経て、違う世界も見てみたいと親に頼み込み、現在は近場にある公立の高校に通っている。 林田の家は屋根瓦が美しい純和風家屋で、広い庭には四季を感じられるような木々が植えられ、橋の架かった池には鯉が泳ぎ、どこか懐かしい風情を保つ大豪邸だ。 同じ敷地内に離れ屋があり、そこには林田に仕える風早一家が暮らしている。 俺とあいつは、主人の息子と仕える者。つまり、そういう関係だ。 「志乃様おはようございます。これ弁当」 家の数奇屋門を出るとそこで待ち構えていた俺より背の高い同い年である風早健司が、弁当の包まれた袋を志乃の鞄に詰め込んだ。 「健司、もう家の外だし、様と敬語はやめろよ。あと志乃って呼ぶのも禁止」 「わかった。つい癖でさ、悪い。でも志乃だって俺のこと健司って呼んでるだろ」 「あ、また志乃って言った」 「あぁごめんごめん。林田」 「わかればいいんだよ風早」 「でもさこの林田呼びは罪悪感で胸がいっぱいになるわ……」 「っ、ふふっ」 はぁっと溜息を吐く健司を見て思わず笑った。 「なんだよ。俺の良心が痛むのを見て笑うのか」 「だって面白い」 俺が笑うと健司も目を細める。 子供の頃から健司は俺の付き人として育てられてきたが、幼稚舎からこれまでずっと同じ学校、同じクラスで過ごしてきた為、感覚的には兄弟に近い。 健司の主な仕事は、俺の身辺警護だ。 林田グループの一人息子である俺は1度誘拐されかけたことがある。 同じように幼稚舎に通う健司が、格闘術を習得させられ始めたのはちょうどその頃だった。

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