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第3章第139話
翌日から俺の仕事が忙しくなり、朝陽の面会が難しくなった。
「上条お疲れ、まだ仕事か?」
時刻は既に夜に七時を回っている。俺より一足先に仕事を終えた要さんが帰り間際に声を掛けてきた。
「これ終わらせないと帰れないんで」
「そうか、まあ無理するな。今日はお先」
そう言って肩をポンと叩くと要さんは帰って行った。俺はパソコンに向かい仕事に集中。終わったら朝陽に連絡を入れないと。結局仕事が終わったのは九時前。
「はぁ……終わった」
俺は椅子に凭れながら背伸びをしてネクタイを緩めた。抱えている仕事の量からして今週は朝陽に会えそうにない。
「帰るか……」
俺はパソコンの電源を落とした後、ネクタイを鞄に入れオフィスを後にした。地下駐車場に着き、車に乗り込むとスマホを取り出し、朝陽に連絡を取る。
「もしもし朝陽?」
「蒼空? 今仕事終わったの?」
「ああ、行けなくてごめんな」
朝陽は大丈夫と言いながら俺の身体を心配する。朝陽の声を聴くと今すぐにでも会いに行きたくなるんだ。
「朝陽、ごめん。週末まで会いに行けないかもしれない」
「そんなに忙しいの? 無理しなしで。僕は大丈夫」
少し寂し気な声に俺の胸は締め付けられる。俺だって会いたい。無理しているのは朝陽の方じゃないかと思う。
「本当にごめん」
俺が謝ると朝陽は小さく頷いた。俺は週末顔出す約束をして電話を切ると家路に着いた。玄関開けると心愛がちょこんと座っている。
「遅くなってごめん、今餌あげるな」
着替えを後回しにし、キッチンへと向かうと心愛に餌を与える。余程お腹を空かせていたのかガツガツと食べ始めた。暫く心愛の様子を見た後、俺は二階に上がり部屋着に着替えリビングに戻る。流石にこの時間に自炊する元気はなく、帰宅時に寄ったコンビニ弁当を食す。食べ終わる頃にスマホが鳴った。
「蒼空お疲れ様、ゆっくり休んでおやすみなさい」
朝陽からのメッセージ。
「有難う、朝陽もゆっくり休んで。おやすみ」
そう一言返事を返すと既読がついて返事はなかった。消灯時間はとっくに過ぎている。俺も寝ないと明日も早い。食事の前に溜めた風呂に入って寝る準備が出来た頃には十一時を回っていた。ドアを少し開けベッドへと横になると心愛がドアの隙間から入ってきて、布団の上に上ると丸まって眠りにつく。
「おやすみ心愛」
頭を撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らす。俺も布団に入り目を閉じると、直ぐに夢の中へと落ちた。
翌朝、目を覚ますと心愛もにゃーと俺に擦り寄る。俺はスーツに着替え、心愛と一緒に一階へ下りると、今日も帰りが遅くなりそうなので心愛の餌を多めに入れて与える。俺はコーヒーと軽めの朝食を作りゆったりと朝食を堪能。傍らで心愛は満足したのか毛繕いをしている。
朝食を終え片付けを済ます頃、時間は六時半を回った。
「心愛、今日も遅くなるけど待っていてくれよ?」
猫に話しかける光景は日常茶飯事。撫でてやると喉を鳴らしてにゃーと鳴く。
「さてと、じゃあ行ってくるな」
俺は鞄片手に玄関に向かうと心愛もついてきた。俺が靴を履き立ち上がるとちょこんと座りこちらを見てくる。
「いい子で留守番していてくれよ」
俺はそう言って頭を撫でると、にゃーと鳴いた。本当に心愛は利口だ。俺は鞄を持って玄関を後にすると車に乗り込んだ。朝陽もそろそろ起きた頃。俺はおはようの挨拶と行ってくるとメッセージを送ると直ぐに既読になり行ってらっしゃいと一言返事が返って来た。
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