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かき氷(冬耶・京介×葵)5
「そうだ、明日はスイカ割りしようか」
さっき”スイカ”と口にしたからだろう。冬耶からはまた新しいイベントがもたらされる。
「明日バイト」
「じゃあ、バイト前にさくっと割ってから行きなよ」
「なんだそれ」
離脱を申し出た京介も冬耶の理論であっさりと捕まってしまう。メチャクチャな言い分に怒るどころか笑った京介を見て、冬耶も一層笑顔を深めていた。
また明日も一緒に過ごせる。それが葵には嬉しくて、ちっとも悲しくないというのに、胸がきゅっと痛んで目頭が熱くなった。
「だから外出んのやめろって言っただろ」
「ごめん、あーちゃん、また赤くしちゃったな」
「え、や、違うの」
葵が目を抑えるなり、二人に見咎められて強制的に抱え上げられてしまった。陽に当たって具合が悪くなったとでも思われたのだろう。
あっという間に涼しい室内に運び込まれたが、しっかりと手を繋いでくれる冬耶と、頭を撫でてくれる京介、二人に甘やかされるなら少しだけこうしてソファに横になるのも悪くない。そうずるいことも考えてしまう。
「じゃあ明日はリビングでスイカ割りに変更だな」
「おふくろに蹴り飛ばされても知らねぇからな」
きっと部屋を汚せば紗耶香は京介の言う通り怒るだろうが、陽平なら喜んで参加してくるに違いない。そして結局は紗耶香も笑って楽しんでくれることも知っている。
────毎日、夏休みならいいのに。
どんなに甘えても甘え足りない。日に日に欲張りになる自分が時折恐ろしくなるほど。
「あーちゃん、明後日したいことも考えておこう」
まるで葵の気持ちを見透かしたように冬耶がそう言ってくれる。京介も促すように髪を梳いてくれるから、だから葵は一番の願望を口にした。
「ずっと一緒にいたい」
その願いを口にすれば、京介からは額に、冬耶からは頬に口付けが落とされる。言葉にしなくとも何かは葵にも分かる。
永遠を誓う約束の印。
だから葵からも二人に心を込めて誓いの証を贈り返したのだった。
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