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第6話
「…お前は」
く、苦しい。
力加減ってものがないのか。
えっと、今、拷問のような力で、抱きしめられています。
「お前はどこまでも、出来たやつだな」
ごつごつした手で髪をさらさら撫でられる。それ、弱い…。
「いきなり連れてこられてタダ働きさせられてんのに、文句も言わずしっかり仕事してくれんだからな。…助かる、ありがとな」
天地がひっくり返りそうな衝撃!
素直にありがとうとか言われたの初めてなんだけど!
そりゃ最初は納得いかなかったけど、娘ちゃんたちに罪はないわけで。
それに、なんだか本当に家族みたいじゃん。
マサキの帰りを待って、一緒にメシ食って、起きたらマサキがいて、見送って…
「愛莉ちゃんも優香ちゃんも可愛いし、家事キライじゃねーしな。…ったく上手いことタダ働きさせられてるぜ」
はあ、なんで口に出すとこんな感じに変換されちまうんだか。
「こうでもしないと4日間、お前に会うことも連絡取ることも出来なかったからな」
そっか、都合のいいオトコ扱いされてるだけじゃなかったんだ。現に今、こうやって一緒にいられてる。
俺もマサキの背中に腕を回してみた。
回りきらないぐらい、厚い胸板。
やべ…したくなってきた。
察したかのようにマサキが俺のジャージを脱がしにかかるけど、そこは止めた。
「こ、ここにいる間は、やらない」
「我慢できんの?俺といて」
「ぶっちゃけキツい、けど」
あの子達が気になって集中できないし、万が一見られでもしたら、と思うとナニも萎んでしまう。
どうにか理性を保たせ、マサキの誘惑にも負けずに、朝を迎えることができた。
「愛莉、優香。今日はみんなでどっか出かけるか」
朝メシ食いながら、マサキがそんなことを言うもんだから、娘ちゃんズの目が輝いた。
「行く!行く!」
「どっか行きたいとこあるか?」
「んーとね、んーとね、動物園!」
優香ちゃんが元気いっぱい手を挙げて言った。
「愛莉もそれでいいか?」
「いいよ、どうせあたしが何か言ったって優香の言う通りになるんだから」
膨れてる愛莉ちゃん。
お姉ちゃんだからって色々我慢させられてるのかな。
「じゃ、俺弁当作ろっか。3人分ぐらいならすぐ…」
「お前もだよ」
「へ?」
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