「――分かった。じゃあ、そのままでいなさい」 「え？」 　総司が利樹の股の間から体を引き抜くようにずれると、彼の腰を掴んでぐっと押し付けた。 　シーツの上に四つん這いになり、尻だけを高く上げる形になった利樹は大きく目を見開いて振り返った。 「父さん、まさか……っ」 「気持ちよくなりたいんだろう……ほら。お前の望んでいるモノを入れてあげるよ」 「待って！いや……そんなこと……ムリっ！ひゃ、あぁぁぁぁぁ！」 　コードが垂れた蕾に灼熱の剛直が薄い粘膜を割り裂くように侵入する。柔らかい蕾は難なくそれを食み、奥へと誘っていく。 　ローターと総司のペニスを食んだ腸は、蠢動を繰り返し、あり得ないほどの快感を呼ぶ。 「いやぁぁぁ！抜いて！壊れる」 「壊れやしないさ。ほら……気持ちがいいだろう？」 「やだ、やだっ！父……さんっ、抜いてっ！」 　掴まれた腰に力が入り、容赦のない抽挿が繰り返されると、利樹の頭の中は何も考えられないくらい快楽に支配されていった。 　内臓を押し上げるような大きさのモノに最奥を突かれ、ローターの振動がダイレクトに内臓に響く。 　シーツの上には白濁交じりの蜜が糸をひき、染みを広げていった。 「あぁ……ダメ！動か、ない……でっ」 「じゃあ、やめてもいいのか？」 「やだぁ……父さんの、意地……わる……はぁ、はぁ……あぁぁん」 　年齢を重ねてもその体躯はうっすらと筋肉を纏い、利樹を組み伏せ、激しく腰を振る体力も十分にある。 　グチュグチュと卑猥に濡れた音を発しながら総司の剛直が抜き差しされる。 　利樹はシーツを手繰り寄せるように掴んだまま、背を弓のように反らし開いたままの唇からは熱い吐息と嬌声、そして締まりなく涎を溢れさせていた。 　利発そうな額には汗が浮かび、下肢から与えられる強烈な刺激を逃がすように腰を揺らめかせては、小刻みに痙攣を繰り返している。 　腰を掴んだ総司の爪が肌に食い込み、うっすらと鬱血していた。その痛みさえも今の利樹には快楽に変わっていた。 「とぅ……さん、俺……も、ダメ……ッ」 　激しく最奥を突きあげる総司も次第に余裕を失っていった。汗ばむ利樹の背中に時折キスを落としながら、絶頂へと駆け上がる。 「利樹……そろそろ出すよっ」 「あぁ……頂戴っ！とう……さんの、精子……ほし……ぃ」 　肩越しに振り返りながら舌を出して強請る息子の姿に、総司の下肢はさらに勢いを増していく。 　ローターの振動が亀頭に当たり、射精感がこみ上げてくる。 　彼の中が細かに蠢動し、ローターよりも繊細で艶めかしい快楽が総司の敏感な場所を包み込んでいく。 「あぁ……あ、はぁ……はぁ……イクよ。利樹……私の子を孕んでくれっ」 「父さんの……欲しいっ！早く……あぁ……変になるっ！」 「イクよ……んぁ……ぐ――っ！」 「来る……父さんの……熱いの、が……あぁ、あ、あ――ひゃぁぁぁぁぁぁん！」 　根元まで深く突き込まれた剛直は利樹の中で大きく膨張し、そして弾けた。 　薄い粘膜を焼きつくすような灼熱が迸り、最奥をしとどに濡らしていく。 　その熱さに、同じく絶頂を迎えた利樹もまた意識を失いかけていた。 　腹の奥底で煮えたぎる総司の熱を受け止め、敏感になった場所をローターの振動が刺激する。 　長い射精を終え、総司がゆっくりと濡れた剛直を引き抜く時でさえ、利樹は腰をヒクつかせて何度もイッていた。 　大きく開いたままの熟れた蕾からは振動で泡だった白濁がドロリと溢れ出した。 　膝をついている事さえ辛くなった利樹は、その場に崩れるようにうつ伏せた。 　まだ中に残っているローターが快感を継続させ、細い腰が何度も跳ねる。 「――利樹」 　彼の背中にゆったりと体を重ねた総司は、汗で濡れた肌に口づけて自分の証を残していく。 　荒い息を繰り返しながらも、未だに可愛らしくなく利樹の髪を撫でながら、蕾から出ているローターのコードを引っ張った。 「はぁ……あぁっ」 　苦しそうに眉を顰め、溜め込んでいた息を吐き出しながら喘ぐ。 　総司の楔によって引き伸ばされた薄い粘膜がヒクヒクと収縮を繰り返すのを感じながら、利樹は総司を押し退けるように寝返った。 　気怠げに四肢を伸ばし、シーツに顔を埋める利樹の腰を抱き寄せると、総司は血の繋がった息子の瞼にそっとキスを落とした。 「利樹……可愛いよ」 　父の声に薄っすらと目を開けた彼は、唇を戦慄かせて赤い舌を覗かせる。 　それに応えるように、ゆっくりと唇を重ね何度も啄んでやると、利樹はうっとりと微笑んだ。 　総司はセックスの最中、絶対にキスをしない。それが父親の息子に対するプライドなのだろう。 　彼を支配すると共に、愛してやまない想いを抑え込むために。 　そして、互いが絶頂を迎えたあとに底なしに優しいキスを利樹に贈る。 　体を重ね、精を貪り、互いに通った血がひとつになった証に……。 「父さん……」 「――違うだろう？」 　白濁に濡れた下肢を摺り寄せながら、利樹が恥ずかしそうに頬を染める。 　今、このベッドの上にいるのは父と子ではない。 　愛だけを求め、互いを欲する獣――いや、恋人なのだ。 「総……司」 「いい子だ。利樹……愛しているよ」 　総司の低く掠れた声が鼓膜を心地よく震わす。 　指を絡め、舌を絡め、脚を絡め合う。 　かつて総司が愛した女性との間に生まれた、たった一人の息子が今は最愛の人になっている。 　なんて皮肉な話だろう。 　しかし、彼らは自身の意思に素直に生きているだけ。 　惹かれ合い、求め合い、一つになりたいと思った相手が父であり、息子だっただけなのだ。 　クチュリ……と水音をたてながら重なる唇が銀色の糸を紡ぐ。 　蜘蛛の糸にも似た透明で儚げな糸が二人を雁字搦めにする。 　総司は利樹に、利樹は総司に……。決して離れることのない束縛を施して。 「――もっと、欲しい」 　色香を放ちながら強請る息子の滑らかな臀部を鷲掴み、総司は嬉しそうに口角を上げた。 「ワガママな息子は嫌いじゃない……」 　そして今夜も、濃密な精と淫靡な香りに包まれてどこまでも堕ちてゆく。 　決して離れることのない親子という血を交わらせて。