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第3話 異国の地
あれよあれよという間に、飛行機で辿り着いた先はフランス。
シャルル・ド・ゴール空港に降り立った祐は、曖昧な笑みを浮かべて日本語で冷や汗を流しつつ入国審査の質問に答えていた。
喋れない祐の日本語と審査官の英語という珍妙なやり取りは、側で見ている者がいたなら首を傾げるに違いなかった。
祐は分からないなりに、なんとか簡単な単語を耳に拾って答えていた。
『おい、お前いい加減にしろよ』
やたらと愛想の良い青年は、隣の男から何か言われるまで祐を解放する様子もなくとにかく喋った。
『悪ぃ、悪ぃ。だって可愛いんだもん』
『俺だって、美人や可愛い子と話したいのに。仕事をこなせ、バカ野郎』
『はい、はい』
審査官は、はぁっと溜め息をつく。
どうやら長話を注意されたようで、仕方ないといった風に肩を竦めて見せた青年は笑顔で祐に手を振り、隣の男と共に見送ってくれた。
正直困っていた祐は、 漸く解放された事に安堵の息を吐いて荷物を受け取りに通路を進んだ。
広々とした場所で荷物を受け取って、案内に従う。
「フランスに来たんだなぁ…」
案内に勿論日本語等は無く、外国に来たんだという気持ちを祐に改めてもたらした。
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