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第4話 オリエンタル・フラワー
フランス語どころか、英語さえも殆ど喋れない祐は内心不安に思いながらも「海外では、つけ込まれたら危ない」と言い聞かせ、なるべく表情に出さずに歩いて行く。
サラサラの黒髪に小造な顔。二重の目と小さめの鼻と口。
身長も160と、華奢な祐は海外だと余計に幼く見られる。
それに付け加え、男と分かるもののどこか中性的なその容姿にオリエンタルな香りを感じ取った周囲は視線を投げる。
表現するなら凛としつつも可憐な花の様。
チラチラ見る者や無遠慮に見つめる者まで居るが、自分の事に関して疎い祐は全く気にすることは無かった。
けれど、今回ばかりはその視線を敏感に感じ取っていて、男が近づいてくる気配がすると慌てて方向転換をする。
ここは日本ではないのだという事実が、いつもは持ち合わせていない危機感をのんびり屋の祐に抱かせていた。
観光客の多い国でもあるし、自分の様な子どもならスリや強盗にとっては尚更格好の餌食だろう。
少し違う方向への危機感を抱いて、祐は貴重品の入った鞄を強く握り締めた。
握り締めたところで、小柄な祐などあっという間に車に連れ込まれるのがオチだが。
「おーい、祐!」
そんな祐が心持ち速足で、出口を目指してキョロキョロしながら進んでいると、大きな声が辺りの喧騒を破って届いた。
そちらを呼ばれて見てみると、懐かしい顔がニカッと白い歯を見せて笑っていた。
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