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第63話 今宵、最高の

不安に膝を抱えて自分でも気づかないうちに、僅かに祐は震えていた。 気がつけば会場に居た女達が全員値段がつけられて、この場から居なくなっていたからだ。 残るは自分だけだった。 「皆様、大変長らくお待たせ致しました。これより今夜最高のお品をお見せ致します。『凶密の宴』主催アルゴが今まで扱ってきて、今後、絶、対、に!!入手困難に値する物です!!…ですので、是非とも皆様よくよくご検討下さいませ」 男が大いに煽って言葉を紡ぐと、会場内のざわめきが一段と大きくなった。 それと同時に、祐の血の気が一気に引く。 「森の泉に現れた皆様への贈り物。森の精霊でごさいます!!」 その言葉と共に、目の前を覆っていた布がサッと開かれた。 顔を膝に埋めて目だけで見ていた祐は、その瞬間驚いて思わず顔を上げてしまった。 照らされる会場。 男達の好奇に満ちた顔がよく見える。 目を見開いている者、口をポカンと開けている者、顔を真っ赤にしている者や身を乗り出して祐を凝視している者。 全員の視線が一気に自分に集中している。 誰も動かなかった。 祐もまた動けなかった。 ただ一人。 アルゴだけはニヤッと笑みを刻んでいたが、誰も気がつかなかったが…。 一瞬の間があったと同時に、会場は爆音にも似た大歓声に包まれた。

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