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恋愛
我ながら狡い手だとも思った。然し一蹴されると思いながらも太宰の返答は予想外のものだった。
正直云って、太宰の中に俺との恋愛等想像だにしていなかっただろう。俺ですら此の感情に戸惑い、否定し、受け入れる迄にどれ程の時間を要した事か。
無理強いをする心算は無い。太宰が誰かに縋りたいと考えた時、其れが俺で在れば幸いだが、若し太宰が一人で抱え切れない何かに苦しんだ時、傍で支える事が出来たならと考えた結果の求愛だった。
不思議な事に今迄歯牙にも掛けて居なかったであろう太宰の態度が軟化した事は求愛の成果であろうと前向きに捉えて居る。
「最近御機嫌じゃないか国木田」
「乱歩さん」
迂闊にも鼻歌を奏でている処を乱歩さんに見られて仕舞う。表面上は変わらぬよう努めていた心算だったが少し浮かれ過ぎて居たようだ。
「気を付けなよ」
「は……」
遠くから此方に向かう駆け足の音が聞こえて来る。敦か。けしからん、廊下を走るなと云い聞かせねば。
「国木田さん! 太宰さんが亦自殺しました!」
「はァ!?」
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