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第1話

 オフが被った日の前夜に、一緒にシャワーを浴び、ベッドの中で肌を重ねるのが常だった。この5年と半年ほどの間――そのうち英軍の臨時軍医としてアフガニスタンに駐在していた1年間は、離ればなれに暮らしていたため違ったが、ポールとまだ恋人同士だった時からずっとそうだった。  燻るような陶酔の中にいる。頭の芯からぼうっとして、心地良いようなもどかしいような、やっぱり心地良いような。やんわりとまぶたを閉ざし、静かに呼吸を乱して、ショーンはシーツの上で仰向けに寝転んでいた。そして薄く目を開ければ、そこには楽園(パラダイス)が広がっていた。  最近は、夜でも暖房をつけなくても過ごせるようになった。ただし、それはちゃんと服を着ていたらの話だ。けれども今は裸でも、暑いくらいだった。暑くて熱くてどうしようもないけれど、やめられない。こんな絶景を超がつくほどの特等席で眺めていられるのだ。身体がバターのようにどろどろに溶けたって、やめるはずがなかった。 「――……ァ……はぁっ……あ、……」  ポールはショーンの上に跨り、一物を窄まりに咥え込んで腰を揺らしている。ローションの卑猥な音、肌と肌がぶつかる音、彼が上下、前後に動くのに合わせて軋むベッドの音、それから悩ましげな彼の声が混ざり合い、ひどく濃厚で官能的な空気が、寝室を支配しきっていた。 「んぅ……あっ……アッ……」 「……、ぁ……それ、すごくいいよ……」  偶然かいなか、絶妙な角度で雁首をぐりっと責められ、唸るような声を漏らして言えば、ポールは不恰好に、けれども嬉しそうに微笑み、さらに腰を動かした。  ポールと付き合って間もない頃、真っ赤になった顔を伏せ、ぎこちなく身体を揺すっていた彼に腰の使い方を教えたのは自分だった。……ゆっくりでいいから、筋肉というよりは骨を動かす感じで……そう、上手だね。君のここに上質なベアリングが組み込まれてるんだ。滑らかに揺らしてみて? 大丈夫、ちゃんとできてるよ……とか何とか言っていたら、ポールは頭のてっぺんや耳の穴から蒸気を吹き出しそうになっていたっけ。ショーンは当時を思い出し、ふふと笑みがこぼれる。  そんな夫は、今ではすっかり艶めかしく、けれども恥じらいを持ちつつ乱れている。ベアリングとまではいかなくとも、ショーンは少しずつ自分が追い込まれていくのを感じ、汗と細々とした嬌声を滲ませ、口元に笑みを含ませながら彼を見上げていた。  しばらくして腰の動きをとめ、肩で息をしながら、ポールはゆっくりとこちらに倒れてきた。それを両腕で受けとめ、やわく抱きしめれば、乱れた吐息とともに「つかれた」と掠れ声が聞こえてきたので、労うように麦わら色の髪に口づけた。  汗みずくのポールは蒸し暑く、このまま溶けてなくなるのではないかと思うほどにぐったりとこちらに身を預け、静かに呼吸を整えている。なだらかな伸縮を繰り返す細い裸体は、酔った時のようにまだらなピンク色が差していた。  繋がった部分もひどく熱い。ポールの腹のなかはショーンのペニスにひたりと絡みつき、うねうねと蠢き、絶えず気持ち良かった。避妊具をかぶった性器は小刻みに震え、カウパーを漏らし続けていることだろう。  けれども、限界はまだ先だった。ショーンはポールを抱くと、彼ごとごろんと身体を反転させた。自分の熱と汗が染みたシーツにポールの背中を横たえ、ちゅ、ちゅ、と瑞々しい音を立てて軽いキスを降らせながら、勃起し続ける雄をなかから抜いた。

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