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第4話

「……あっ! あ、ァ……っ、アッ、そこ……!」 「……前立腺? 奥?」 「んぁ、ッ……ぁ……ど、どっちも……」 「どっちも?」 「ん、……きもち、ぃ……ッ」  消え入りそうな声で、けれどもはっきりとそう言ったのが聞こえ、唇がにっと左右に広がる。ポールの太ももを掴んで大きく広げ、荒々しく波打つように腰を振る。そうすれば、ポールはまたさらに大胆な声をこぼし、恍惚とするのだった。  自分が気持ち良いかどうかは、相手を気持ち良くさせているかどうかで変わってくると思う。セックスの快楽は相乗効果によって生み出され、増幅するものだ。  だから―― 「……俺も、すごく気持ちいい」 「アッ……あぁ、っ……!」 「狭くて、熱くて、どろどろで……俺の精液搾り取ろうとしてるよ?」 「ッ……、ぁ……」  だから、ポールとの行為はいつも夢中にさせられる。ポールだってこちらに骨抜きにされている。決して自惚れなんかじゃない。ふたりして馬鹿になって、めちゃくちゃになって、そうして互いの剥き出しになった愛情を確かめる。性欲の充足と言ってしまうと身も蓋もないが、その中で得られるものは確かにあるこのひと時が、たまらなく好きだった。 「……あ、んっ……、ゃ……イク……イくッ……!」  前立腺をぐりぐりと苛め続けていると、ポールはやがてとびきり甘い声を吐き出し、身体を大きく震わせた。アナルが窄まり、ペニスはさらに締めつけられる。堪らずショーンも上擦った声を漏らした。尿道が痙攣する。背中から頭に突き抜けるような疼きが走り、ぎゅっと瞑った目の奥に真っ白な世界が広がる。 「……は、ッ……ぅ……!」 「ぁっ……熱……」  ポールはとろんと蕩けた表情で、こちらをぼうっと見上げた。彼のうっすらと割れた腹には、薄い色の体液がべっとりと飛び散り、性器は萎んでいくところだった。今夜も一度もそこを触らず、彼は後ろの刺激だけで果てたのだ。  そしてショーンも、ポールの腹のなかで高みに上りつめた。約7秒ほどの法悦ののち、自分が吐き出したものでぬるく泥濘んだそこからゆっくりと竿を抜けば、鈴口から糸のようにザーメンが伸びた。次いでそれがとろりと溢れ出てきて、シーツに垂れていく。明日にでも洗わないと、なんて暢気なことを考えながら、ぐったりとしているポールに覆い被さり、荒れた呼吸を整えている彼の唇に吸いついた。 「……んっ……」 「……ポール、」 「……ん? まだ、足りない……?」  余韻に浸った艶やかな声で、囁くように訊ねてくるポールの下唇を、仔犬のようにぺろぺろと舐める。ポールは少し困ったように、けれども嬉しそうにくすくすと笑った。背中に回された細い腕は、絶頂を越えてから弛緩していたが、素肌に食い込むように巻きつき、こちらが大きく割り広げていた両脚も腰にべったりと絡みついてくる。 「……全然足りないよ」  ショーンは言い、今度はポールの左耳を舐める。ふたりの下腹部に挟まった自身は、早くも硬さを取り戻し、上向いていた。ポールが掠れた嬌声を漏らすのを聞きながら、再び彼のなかに入っていけば、精液で汚れた腸壁も嬉々として蠢きだした。 「ふ、……あ、ぁ……ン……」 「ポール、かわいい……愛してる」  汗が浮いたポールの額にキスを落とす。ポールがふにゃりと幸せそうに笑い、僕もと唇を動かす。普段は照れ屋で、なかなか素直に心情を口にしないが、理性がぼろぼろに崩れてなくなった今は違った。律動し奥を突く度に、全身から飛び散らした愛の粒を痛いほどにぶつけられる。  ……本当に可愛い。俺だけのポール。だからこうして俺のもので汚して、俺だけのものにする。至福の時間だった。何度目かのキスに耽りながら、やがて二度目の射精を迎える。そして、激しく痙攣する夫の裸体にもくまなく口づけし、心臓の鼓動が重なり合うほどに強く抱擁した。

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