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 高梨さんとの距離が縮まったのは、三ヶ月ほど前の事だ。  俺は会社の忘年会で、酔っ払った高梨さんを部屋まで送った。  その時に、部屋の中で高梨さんに抱きしめられて「嫌なら突き飛ばせ」とキスされたのだ。  唇を離した高梨さんは真剣な眼差しで俺を見つめてきたし、正直俺は嫌じゃなかった。  もちろん戸惑ったし、酔った冗談だと部屋を出た後に悩みに悩んだ。結論は出ずとも、冗談でこんな事する人ではないとすぐさま思い直す。  そんな期待を裏切るように、翌日に高梨さんと会社で会った際はいつも通りの態度だった。  やっぱり酔っていたんだ、と内心複雑な気持ちになってしまう。  そんな気持ちを持て余していた時、高梨さんに付いて自販機の前に行くと、高梨さんはお金を入れてボタンを押した。  あれ? 今日は奢ってくれないのかな、と図々しくも思っていると「ほら」と高梨さんは俺がいつも買う缶コーヒーを手渡してくれた。  こんな事初めてで、俺は呆気に取られてしまった。そんな俺の様子に、高梨さんも困惑気味に「違ったか?」と聞いてきた。  慌てて首を横に振って「ありがとうございます」と言ってから、思わず頬が緩んでしまう。ちゃんと俺の好きな銘柄を、気にかけてくれていたのだと思うと嬉しかった。  ホッとしたように表情を緩める高梨さんを、可愛いと俺は思った。こんなことで、と思われるかもしれないけれど。こんなことで、俺は高梨さんを好きになった。  そうこう考えているうちに、俺は高梨さんのマンションに着く。  スマホを取り出して『今、高梨さんのマンショの前です』とメールをする。高梨さんの事だから、連絡もなしにと言ってくることだろう。少し卑怯だが、これで「連絡しました」と言える。  エレベーターで五階まで上がり、高梨さんの部屋の前で一度深呼吸を繰り返す。  何も知らない高梨さんがどんな顔をするのか、考えるだけで心臓が高鳴って頬が緩んでしまう。  インターホンを鳴らすと、しばらくしてから扉が開かれ驚いた顔の高梨さんが現れた。  精悍で整った顔が今は、少し間抜けに見えて可愛い。

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