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「美織ちゃん!ありがとう!君のおかげだよ」  フルーツ盛りだくさんのケーキを頬張る美織ちゃんを前に、俺は興奮気味に訴えかける。 「おい、やめろよ」  高梨さんは顔を顰めつつ、苺とスポンジを口に運んでいる。  口では不平を言っているが、ケーキに夢中なのが明らかだ。 「美織、なんかしたっけ?」  口をモグモグさせながら、美織ちゃんが首を傾げている。 「川神、余計な事言うなよ」  高梨さんが眉を顰め釘を刺してくる。それでも俺は言いたかった。美織ちゃんのお陰で聞けなかったかもしれない『好き』という言葉を聞くことができたのだから。 「りょーすけったら、川神の事好きなくせにすぐ怒る」  美織ちゃんの一言に、初めて高梨さんの手が止まった。 「へっ?」  俺も驚いて、間が抜けたような声が出てしまう。 「りょーすけったら、川神のこと好きなの?って聞いても教えてくれないから。川神はりょーすけが好きなのに、りょーすけは好きじゃないの?って聞いたら、好きだって言ってたもん」  美織ちゃんはフォークを置くと「ご馳走さまー」と言って、ミニチュア人形の散乱しているスペースへと行ってしまう。  視線を高梨さんに向けると、なんとも気まずそうな顔をしていた。少し頬が赤く見えるのは思い過ごしだろうか。 「……高梨さん」  胸が甘く締め付けられ、自然と顔がだらしなく緩んでしまう。美織ちゃんにまで、ちゃんと俺の事を好きだと言ってたなんて…… 「俺も好きですからね」  俺の一言に、高梨さんの顔が一気に赤く染まった。 「お、おいっ!!」  慌てたように、美織ちゃんの方に振り返る高梨さんが可愛くて俺は思わず笑ってしまう。  当の美織ちゃんは気にした風でもなく、「りょーすけも早く来て!」と怒っている。  それでも狼狽えている高梨さんの事が、愛おしくて堪らない。  目の前に置かれている飛びっきり甘いスイーツよりも、高梨さんの『好き』という一言の甘さには一生敵わないだろう。  俺は確認するようにケーキを口に運び、口の中に広がる甘さを堪能する。  やっぱり高梨さんの『好き』には敵わない甘さだと、俺は静かに飲み込んだ。 END

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