11 / 13
11
まだ冬ではないとはいえ、落ち葉の舞い散るこの季節は昼間でも肌寒い。
「高梨さん? どうしたんですか?」
何も言わない高梨さんに、痺れを切らして声をかける。
「昨日、美織が聞いてきたんだ」
「美織ちゃん、ですか?」
思わず拍子抜けする。何でこんな寒い場所で、美織ちゃんの話をするのか分からない。
「川神のこと好きかって……」
思わず唾を飲み込む。聞きたかったはずの答えが、あまり聞きたくなく思えた。
「黙ってたら、美織に怒られた」
「怒られたんですか?」
高梨さんの背を見つめる。こっちを向いてないから、どんな顔をしているのか分からない。
「川神は好きだって言ってたのに、なんで好きじゃないのかって」
好きじゃない……思わず、体から力が抜け落ち膝をつく。
アスファルトが冷たいせいなのか、ショックのせいなのかサーッと血の気が引いていた。
「お、おいっ!」
高梨さんが駆け寄ってきて、「大丈夫か?」としゃがみ込んだ。
「俺の事……好きじゃなかったんですか?」
潤んだ視界の中で、高梨さんが困ったような顔をしていた。
やっぱり、俺が早とちりしたのだと悟る。そりゃあそうだろう。なんで男の俺を好きになんてなるのか分からない。そんな事にも気づけなかった俺が悪い。
「好きだ……」
囁くような声が微かに聞こえ、驚いて顔を上げる。
「えっ?」
「好きだって言ったんだ」
高梨さんは眉間に皺を寄せ、やや俯き気味に言った。
その怒っているようで、照れたような姿に思わず抱きつく。フワッと香る、石鹸の香りに朝シャンする派なのかと胸がくすぐったくなる。
先までの絶望的な気分から急浮上して、全身が一気に体温を取り戻していく。
「おいっ、ここ会社だぞ!」
高梨さんが慌てたように声を上げたが、俺は無視して背に回した腕を強くした。
ともだちにシェアしよう!