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 まだ冬ではないとはいえ、落ち葉の舞い散るこの季節は昼間でも肌寒い。 「高梨さん? どうしたんですか?」  何も言わない高梨さんに、痺れを切らして声をかける。 「昨日、美織が聞いてきたんだ」 「美織ちゃん、ですか?」  思わず拍子抜けする。何でこんな寒い場所で、美織ちゃんの話をするのか分からない。 「川神のこと好きかって……」  思わず唾を飲み込む。聞きたかったはずの答えが、あまり聞きたくなく思えた。 「黙ってたら、美織に怒られた」 「怒られたんですか?」  高梨さんの背を見つめる。こっちを向いてないから、どんな顔をしているのか分からない。 「川神は好きだって言ってたのに、なんで好きじゃないのかって」  好きじゃない……思わず、体から力が抜け落ち膝をつく。  アスファルトが冷たいせいなのか、ショックのせいなのかサーッと血の気が引いていた。 「お、おいっ!」  高梨さんが駆け寄ってきて、「大丈夫か?」としゃがみ込んだ。 「俺の事……好きじゃなかったんですか?」  潤んだ視界の中で、高梨さんが困ったような顔をしていた。  やっぱり、俺が早とちりしたのだと悟る。そりゃあそうだろう。なんで男の俺を好きになんてなるのか分からない。そんな事にも気づけなかった俺が悪い。 「好きだ……」  囁くような声が微かに聞こえ、驚いて顔を上げる。 「えっ?」 「好きだって言ったんだ」  高梨さんは眉間に皺を寄せ、やや俯き気味に言った。  その怒っているようで、照れたような姿に思わず抱きつく。フワッと香る、石鹸の香りに朝シャンする派なのかと胸がくすぐったくなる。  先までの絶望的な気分から急浮上して、全身が一気に体温を取り戻していく。 「おいっ、ここ会社だぞ!」  高梨さんが慌てたように声を上げたが、俺は無視して背に回した腕を強くした。

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