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遭遇
やっと騒がしい辺りへと着いた頃、背後に猛烈な圧を感じた我は首を傾げた。
──はて、面妖な。
ドスドス、フンスフンス、ドスドス……
その音の元に思い至った我は、大声で叫んだ。
「ドライズテール、止まれ!」
しかし、必死の者は耳を貸すどころか、更に激しく泣きながら、駆け寄ってくる。
「あるじさまぁぁああ~っ!」
──ああ、マズい!このままいくと、とんでもないことが……
頭を抱えたくなった我の傍へ、禍禍しいほど浮き立つ気配が現れた。
「ハロー!お久し振り」
「ぉ!……お久し振りです、叔父上」
ギクシャクと会釈を返す我へ、しなだれかかる姿形だけはやさしい男神
──此奴も騒ぎに交じっていたのか。やれ、面倒な……。
「相変わらず、堅いわね。そんなことより、さっきから聞こえるこのラブリーな力強いリズムは、貴方のカワイコちゃんが刻んでいるのかしら?」
嗚呼、この猥らがましい、粘り着くような視線。
今すぐ、どこぞの崖に投げ付けてしまいたいほど、不愉快極まりない。
だがしかし。
今ここでコトを構えるは、どう考えても得策とは言えぬ。
──眷属の安全の為、ここまでやって来たことを忘るまじ
総毛立つ身を持て余しながら、控えめに申し出た。
「ぁ、あの。我々はすぐにお暇いたしますので、どうか、お構いなく」
「ぁ、あるじさまぁーっ!!」
横から飛び付かれ、呆気なく倒れた我は、そのまま下僕に組み敷かれた。
「あら?あら、あら!」
手を打ち鳴らし、頭を振る叔父上が、クルリと廻った。
ザザザッと風が起こり、灰色の分厚い雲が集まる。
浮かれた者共が走り出し、悲鳴をあげ、飛び立つ鳥は逃げ惑う。
──始まってしまうのか?やはり、兄上でなくては、無理であったか
口惜しさにギリリと歯噛みした時であった。
「ぁ、主様!安らぎの鈴をお持ちしましたっ」
下僕が己が懐へと、右手を突っ込んだ。
──そうか!!
今すぐ此奴らを全て眠らせてしまえば。
誰も傷付かず、この騒ぎを収めることが出来る!
「よし、ドライズテール、歌え!」
「ねんねん、良い子よ、ねんころろ~」
若干調子はずれな歌に合わせ、我は全力で鈴を鳴らし、こう唱えた。
「この鈴の音を聴くものよ、須くすみやかに、深い眠りにつくが良い!」
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