11 / 11

遭遇

やっと騒がしい辺りへと着いた頃、背後に猛烈な圧を感じた我は首を傾げた。 ──はて、面妖な。 ドスドス、フンスフンス、ドスドス…… その音の元に思い至った我は、大声で叫んだ。 「ドライズテール、止まれ!」 しかし、必死の者は耳を貸すどころか、更に激しく泣きながら、駆け寄ってくる。 「あるじさまぁぁああ~っ!」 ──ああ、マズい!このままいくと、とんでもないことが…… 頭を抱えたくなった我の傍へ、禍禍しいほど浮き立つ気配が現れた。 「ハロー!お久し振り」 「ぉ!……お久し振りです、叔父上」 ギクシャクと会釈を返す我へ、しなだれかかる姿形だけはやさしい男神 ──此奴も騒ぎに交じっていたのか。やれ、面倒な……。 「相変わらず、堅いわね。そんなことより、さっきから聞こえるこのラブリーな力強いリズムは、貴方のカワイコちゃんが刻んでいるのかしら?」 嗚呼、この猥らがましい、粘り着くような視線。 今すぐ、どこぞの崖に投げ付けてしまいたいほど、不愉快極まりない。 だがしかし。 今ここでコトを構えるは、どう考えても得策とは言えぬ。 ──眷属の安全の為、ここまでやって来たことを忘るまじ 総毛立つ身を持て余しながら、控えめに申し出た。 「ぁ、あの。我々はすぐにお暇いたしますので、どうか、お構いなく」 「ぁ、あるじさまぁーっ!!」 横から飛び付かれ、呆気なく倒れた我は、そのまま下僕に組み敷かれた。 「あら?あら、あら!」 手を打ち鳴らし、頭を振る叔父上が、クルリと廻った。 ザザザッと風が起こり、灰色の分厚い雲が集まる。 浮かれた者共が走り出し、悲鳴をあげ、飛び立つ鳥は逃げ惑う。 ──始まってしまうのか?やはり、兄上でなくては、無理であったか 口惜しさにギリリと歯噛みした時であった。 「ぁ、主様!安らぎの鈴をお持ちしましたっ」 下僕が己が懐へと、右手を突っ込んだ。 ──そうか!! 今すぐ此奴らを全て眠らせてしまえば。 誰も傷付かず、この騒ぎを収めることが出来る! 「よし、ドライズテール、歌え!」 「ねんねん、良い子よ、ねんころろ~」 若干調子はずれな歌に合わせ、我は全力で鈴を鳴らし、こう唱えた。 「この鈴の音を聴くものよ、須くすみやかに、深い眠りにつくが良い!」

ともだちにシェアしよう!