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第12話

優しい時間 明かりの消えた部屋、ベットに寝ているのは翔一人、榊はベットに座り翔の髪を梳いている。 「落ち着いたか?」 低く優しい声。 翔は頷いて返事をした。 あれからぐったりした翔を榊は抱くこともなく寝かせた。 「両思いになれたんだ。焦る必要はないよ。」 榊の言葉に翔は少し悪いと思いながら抱きついてキスをした。 「できれば俺のことは夏目と呼んで欲しい。」 榊の願いに翔は頷いた。 しかしなかなか声に出して呼べない。 「な、なつめ君…」 恥ずかしがる翔。 「君はいらない。夏目だ。」 翔はもう一度呼んだ。 「夏目…夏目…」 榊はギュッと翔を抱きしめた。 榊はとても満ち足りていた。 翔が自分の事を好きと言ってくれたことに…昨夜は同じベットで一緒に寝た、朝は先に目が覚め翔が起きるまで顔を眺めていた。 幸せだった。 翔を抱くことは未遂だったが焦りたくない。 翔を大切にしたい。 しかし健康な男子高校生、少し…いや、だいぶ生理的欲求はツライけど。 翔にはナイショで翔が寝ているベットを抜け出してバスルームで処理してきた。 昨夜、翔は自分では気付いてなっかたみたいだけど俺に抱かれている時に震えていた。 きっと俺の知らない中学の時に何かあったんだ。 それをクリアしないと翔を抱くことはできない。 今はこの腕の中にいてくれるだけでいい。 ゴールデンウィークの前に学園行事として球技大会がある。 クラスの親睦を深めようと担任は言っていたが、やる気のある生徒は少ない…。 運動部に所属している人は自分の部活と同じ種目には参加できない様になっている。 今のところ翔も榊もどの部活にも入っていない帰宅部だった。榊にはいろいろ誘いが来ているが選べず、翔は運動に興味がない。 「必ず参加するように! クラス対抗だから少しでも得意な競技に参加するように!優勝したら、俺から差し入れしてやるぞ!」 担任の一言でクラスが賑やかになった。

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