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第75話

榊は竜崎と共に林の中を翔の所まで急いだ。 携帯からは翔の声が聞こえる。 だが翔も榊も落ち着いていた。 竜崎だけが訳が解らず榊の後をついて行った。 二人はすぐに翔の側に駆け寄った。 「先輩、その話俺たちも聞いていいですよね?」 榊は翔の前にいる三年生徒に声をかけた。 「ああ構わないよ、君たちなら…じゃあ、まずは自己紹介からだな。僕は、東雲 秀一(しののめ しゅういち)斎藤くんには危害を加える気は無いよ。 むしろ好意的なんだがな。」 榊は翔の前に立つと東雲の視線から翔を遮った。 「先輩がどういった好意を翔に向けているかは知りませんが、最近翔の周りで起こっている事は、先輩が仕向けてるんですか?」 「君は、榊君だったかな? いいや、僕は関係ないよ。僕は純粋に斎藤君が気に入ってるだけだよ。 でも、斎藤君に何が起こっているかは知ってるよ。」 榊の背後で翔は身を強張らせた。 『この人はどこまで知ってるんだろう…あの事も知ってるんだろうか?』 「先輩がどこまで知ってるか知りませんが、こっちも情報が欲しいので質問してもいいですか?」 榊は背中に隠れている翔に視線を向ける。 翔は俯いて榊の制服の端を握っていた。 もう一度東雲に向き直ると質問をした。 「単刀直入に聞きます、先輩は犯人を知っていますか?」 東雲は少し驚いて答えた。 「本当にストレートに聞くんだな、僕が犯人側ならどうしたんだい?」 東雲の答えももっともだ。 いつもの落ち着いた榊には無い行動だ。 「さっきも言ったが僕は斎藤くんに危害を加える気は無い。 君は少し落ち着いた方がいいな、斎藤くんの事が大事なのはわかるが判断を誤ると見えないモノに足を掬われるぞ」 榊は深呼吸すると東雲を見つめた。  東雲は落ち着気を取り戻した榊に頷くと話し出した。 「犯人と断定できる人物はいないが黒に近いグレーな人物は知っている。その人物の情報なら教えることもできるが、 交換条件がある」 「交換条件? 内容によっては…」 「大丈夫、たいした事じゃ無い。 斎藤くんとデートがしたいだけだから!」  榊の背に隠れていた翔が驚いて声を上げた。 「あっ、あのデートって何ですか? ぼ、僕には…」 翔は声を詰まらせた。 自分には夏目以外と付き合う気はない。 いきなりの事に何と答えればいいか言葉が出ない。 「先輩、それは無理ですよ。翔は俺のなんで少したりとも共有する気はありません。翔以外の事でお願いします」 榊の言葉で翔は顔を赤く染めた。   

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