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第74話

教室に着くと榊と翔はかけられる声におはようと答えながら自分の席に着いた。 翔の噂をしている奴はいないか榊は耳を澄ました。 だがどこからもそんな声は聞こえないし、視線も感じられなくて安堵した。 翔の方を見ると落ち着かないのか、そわそわしている。 「大丈夫か?」 榊が小さく聞いてやるとぎこちなく笑って頷いた。 ガラッとドアを開ける音がして担任が入ってきた。 みんなバタバタと席に着き日常が始まった。 「おい、大丈夫だったか?」 昼休みに屋上で竜崎に尋ねられた。 「ああ、今のところクラスでは問題ない。」 榊を挟んで三人フェンスにもたれながら朝の事を話していた。 「誠二の方はどうだった? 何かわかったか?」 竜崎は軽く首を振ると答えた。 「いや、これといって進展はない。以前の携帯のデーターは消した事は確かなんだがそれ以前の事は本人から聞かないとわからないからなぁ…」 二人して腕を組んで黙ってしまった。 「あちらさんから、もう少し手を出してくれると何かわかるかもしれないが…今のところ噂だけだからなぁ」 竜崎の言葉に翔が体を強張らせた。 榊がちらりと横顔を伺うと翔はうつむいて自分の足元を見ていた。 「大丈夫か? 」 榊の問いに小さく頷いた。 「あ、あのね…僕が一人で行動したら、何か仕掛けてくるかなぁ…」 翔の言葉に二人は驚いて言葉を失った。 「斎藤からそんな言葉が出てくるとは、驚きだ。」 竜崎は目を開いて驚いた。 榊は黙って翔を見ている。 「自分の事だから、二人にばっかり迷惑をかけるのも…」 榊が真剣な表情で口を開いた。 「本気か? 狙われている自分が囮になるんだぞ」 「僕も何かしたいんだ…やらせて、お願い」 日頃、気の小さい翔が何かいい出すと聞かない頑固な所を知っている榊は『わかった』とだけ言って竜崎に向き直った。 「そう言う事だから、放課後、誠二も付き合ってくれ」 「いいのか?」 「こいつは、言い出したら聞かないんだよ」 榊の言葉に今度は竜崎が『わかった』とだけ答えた。 三人は放課後に約束をして教室に戻った。 午後の授業も終わり榊と翔は玄関に向かった。 先に来ていた竜崎が二人に気がつき近ずいてきた。 「待たせたな」 榊が声を掛けて三人で外に出て、近くにある自販機の側にジュースを買うフリをして立ち止まった。 「翔、いま俺に電話をかけろ通話のまま胸ポケットに入れてそのまま寮まで戻るんだ。 俺と誠二は少し離れてついていく。 何かあったら声を出せ、いいな!」 榊の指示で携帯を通話のまましまうと一人で歩き出した。 その後ろを竜崎と榊が隠れながらついて行く 「よく賛成したな、反対すると思ったのに」 竜崎の言葉に翔から目を離さずに榊が答えた。 「あいつ意外と頑固でな、言い出したら聞かないんだよ。なのに気が小さいというか臆病っていうか」 「おい、顔がにやけてるぞ。」 榊は竜崎の指摘に『そうか』と答える。 二人はしばらく黙って歩いて行く。 もう寮の近くまで来てしまった。 「今日は不発だな」 そう竜崎が話すと少し前を歩いていた翔が立ち止まった。 辺りをきょろきょろ見ている。榊は携帯を耳に当て何か聞こえないか集中した。 かすかに『斎藤』と翔を呼ぶ声が聞こえてくる。 「おい、何か聞こえるのか?」 二人は前にいる翔に視線を集中した。 翔は何かを見つけたように林に入って行く。 「おいおい、どこに行くんだよ!」 竜崎は翔のいきなりの行動に驚いたが榊は落ち着いてその肩を叩くと竜崎を横の林に促した。

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