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俺の彼氏

宮田圭一郎(39)×澤田涼(26) ゲロ甘、本番まではいかないけどエロあり。 俺の彼氏は、真面目でしっかりしていて優しい、オトナな男性だ。 俺よりも13歳年上の39歳。職業は公務員。「東京都の財政を司るような部署にいる」っていうのは聞いてるけど、具体的にどんな仕事をしているのかは知らない。教えてもらったところで、俺の頭では理解できないだろうから、聞いたことがなかった。 横浜国立大学っていう賢い大学の出身で、大学時代は経済学と英語を勉強していたそうだ。大学3年生になる頃には1年間休学して、カナダに語学留学してたんだって。だから、英語がペラペラ。通勤中や家にいる時は、英語のニュースを聞きながら、経済新聞に小難しい経済雑誌、金融雑誌を読んでいる。俺がそんなことしたら、脳がパンクして熱が出そうだ。 背は167センチの俺より10センチ以上は高くて、抱きしめられたりキスしたりするのに丁度いい身長差。爬虫類……具体的に言うと蛇っぽい顔で、今期の朝ドラに出演している俳優さんに似てる。ほっそりとした面長で、奥二重の切れ長の目が格好良くて、鼻筋がすーっと細く通っていて、唇は薄いけど柔らかい。 白髪が増えてきたと本人は嘆いているけど、髪の毛はふさふさで、前髪をさらりと横に流しているだけで、知的でクールな雰囲気が醸し出される。休日にはそれに無精髭が加わって、ふんわりと気怠げな色気が出る。どっちも格好良くて、好き。一緒に暮らしていて、毎日顔を合わせているけど、未だに相手を見るとドキドキすることが多い。 毎日、恋してる。 昨日より今日、今日より明日、相手を好きになっている。 気持ちいいことと愉しいこと、それからお金を求めて色んな男の人と関係を持っていた頃の自分が、今の俺を見たらきっと、びっくりするだろう。 特定の人に恋愛感情を抱いて、その人のために自立した人間になって、その人と死ぬまで一緒にいると決めたなんて。 人って、こんなに変われるものなんだね。 そう思うと恋ってすごいし、それを題材にした映画やドラマがたくさん作られて、人気が出たりする理由が分かった気がする。 画面の中の俳優さんと女優さんが、演技ではあるけど幸せそうな表情をしているのを見て、共感できるようになったし。 毎日、すごく幸せ。 ろくでもなかった頃には感じることができなかった、穏やかで暖かな気持ちや、痛いのに甘い高鳴りが、今は胸の中にある。 それを与えてくれた彼氏のけーくんには、本当に感謝してる。 だから俺はいつも、ありったけの愛をけーくんに捧げていたい。 「……っ、けーくん、くすぐったい……」 金曜日の夜、時刻は23時過ぎだった。俺は仕事を終えて帰宅したけーくんと一緒に、お風呂に入っていた。 ふわふわと湯気が立ち込める中、けーくんは俺を膝の上に乗せて、俺の薄っぺらい胸に吸いついてくる。唇の柔らかな感触と皮膚を這う舌の熱さに、俺はくすくすと笑って身をよじりながら、けーくんの濡れた頭を抱きかかえていた。 今週1週間はずっと仕事が忙しかったみたいで、けーくんは毎日、23時過ぎに家に帰ってきていた。朝は朝で、7時過ぎには家を出て行く。普段であれば8時前に、同じく出勤する俺と一緒に、山手線に乗って職場がある新宿へと向かう。夜は平均して20時には帰宅して、先に帰っている俺と晩ご飯を食べ、だいたい一緒にお風呂に入る。その後はイチャイチャしたり、しなかったりして、1日を終えている。 最後にえっちしたのは、先週の日曜日。 あの、どろどろに蕩けそうなほどに気持ちいいセックスをしてから、5日が経っていた。 けーくんは、まるで赤ちゃんのように俺の乳首をちゅぱちゅぱ吸っている。俺の貧相なおっぱいからは母乳も何も出ないのに。これが自らの生命線で、吸わないと死んでしまうと言わんばかりに一生懸命だった。 その姿があまりにも可愛くて、胸がきゅんきゅんする。 「……けーくん、今日は甘えん坊だね?」 けーくんの頭を撫でながら、甘ったるい声でそう言えば、けーくんは上目遣いで俺を見た。 不安げな眼差しだった。 「嫌か……?」 トキメキ指数が0から100まであるとすれば、今のは100万ぐらいあった。 それは反則だよ、けーくん。可愛いは大罪です。 俺はだらしないまでに頬を緩ませながら、けーくんをぎゅっと抱きしめる。 「ぜんっぜん嫌じゃない。むしろ、もっとしていいよ?」 「……リョウ……、リョウ……」 「んんっ……ふふ……」 腕の中に閉じ込めたら、けーくんの顔が見えなくなった。けど、変わらず俺の乳首はおしゃぶりにされている。強く吸われて痛いし、じんじんするけど、耐えられる範囲内だ。 俺は上機嫌に笑いながら、けーくんを抱擁し続けた。 これまでの経験則からすると、けーくんは仕事が立て込み、キリキリ舞いだった状態から抜け出した直後に、こうして全力で俺に甘えてくる。 なりふり構わず、癒されたいみたい。 いつもは落ち着いていて、俺のお世話を焼いてくれて、格好いいけーくんが、俺の前でだけ、とってもとても可愛くなるのだ。 小さい子を持つママさんの気分って、こんな感じなのかな。 男だけど母性本能に目覚めてしまったし、それをこしょこしょとくすぐられて、たまらない気持ちになる。 「けーくん、俺のおっぱい美味しい?」 「ん……」 こくこくと素直に頷く姿にまでも、胸がきゅんっと締めつけられる。 親バカならぬ、彼氏バカになってる。その自覚はおおいにあった。 「おっぱい吸ってるだけで、満足?」 けーくんの背中に回した右手を、するりと腹部へと移動させる。中年太りやメタボとは無縁の、ほっそりとしながらもがっしりとしたそこに手のひらを這わせれば、けーくんは乳首から口を離し、短い吐息を漏らした。 しっかりと生えた下生えを撫で、上に反った茎の輪郭を、指先でなぞる。 けーくんは吐息を乱し、身体をひくつかせる。入浴剤によって白桃色に染まったお湯が、ゆらゆらと波を作った。お風呂に浸かっているお陰で、血色が悪かったけーくんの顔はほんのりと紅潮していたが、さらに赤くなっていく。 「……おちんちん、バキバキになってるよ?」 自分で言っておきながら、ちょっとだけ恥ずかしい。 昔、関係を持った人たちとのセックスでは、今以上にはしたないことばかり口にしていたし、それに対する羞恥心なんて、まったく湧かなかったのに。 けーくんが相手になると恥じらいを覚えてしまうのは、何でだろう。 ぼんやりと火照っていた身体が、着火したように熱くなる。その一方で、背中にはぞくぞくとしたものが走っていった。 身体が密着しているため、けーくんの棹に俺のモノが、ひたりと触れ合っていた。互いにビクビクと震え、大きさと硬さが増していた。 けーくんが俺を見上げる。疲れきった表情で、口の周りは生えかけの髭によって青くなっている。顔は全体的に赤らんでいるけど、目の下のクマだけは相変わらずの青黒さだ。 「そういうことを、言うな……」 恥ずかしそうに視線をよろめかせ、居心地の悪そうな表情になる。童貞じゃないのに、反応が初々しい。俺はますます興奮して、顔や身体が熱くなって、口角がにまにまと上がってしまう。 「でも、おちんちん、また大きくなったよ?」 「……っ」 「萎えてる時でも立派だなぁって思うけど、勃っちゃうとほんとすごい……」 「リョウ……やめろ……!」 「褒められて、嬉しくない?」 うっとりとした声で言いながら、けーくんのぼこぼこしたそれを扱き始める。けーくんは顔をわずかに歪めて、こちらを睨んでくるけど、俺はどこ吹く風だった。 「ねぇ。疲れてるよね?」 はぁはぁ、と息を乱しながら、けーくんの気持ちいいところを指で責めながら、そう訊ねる。けーくんは何も言わない。ただ、お風呂に入る前はまるで生気のなかった目をギラギラと光らせて、俺を見上げていた。 雄臭い眼差しに、お腹の奥がきゅーっと締まった。 寂しくて、切なくて、胸が痛くなる。 何度も経験している感覚なのに、未だに慣れない。 一生、慣れることはないのだろうと思う。 「……俺のナカで、よしよししてあげよっか?」 けーくんの瞳と見つめ合ったまま、俺は腰を浮かせ、そそり勃つそれを入り口にあてがう。 まだ解していないので、挿入はしない。先っぽだけを襞で弄ぶ。 けーくんの喉が鳴り、身体が強ばった。そうなることを期待しているかのような反応に、俺は嬉しくなる。 「もっといっぱい、甘えていいよ」 俺よりもずっと年上で、背も高くて格好いい彼氏。 俺だけのけーくん。 だけど今は、俺なしでは生きていけない赤ちゃんになってほしい。 「俺の身体で、たくさん癒されて? ……んんっ!」 突然、唇に噛みつかれた。びっくりして、目を丸くしていると、今度は舌が無遠慮に俺の唇や口の中に伸びてきた。けーくんは、これでもかというくらい鼻息を乱して、怒ったような表情で俺を見つめ、俺の身体を乱暴に掻き抱く。 「んぁ……ぅ、んっ……!」 「……リョウ」 俺の舌や口腔を好き放題にいじめながら、けーくんは低い声で俺の名前を呼んだ。 「今夜は寝かさない……、泣いて嫌がっても、絶対に離さない」 あ、ダメ。それはダメ、いけません。 格好良すぎて、ズルイ。酷い。好き、好き、大好き。 くらりと眩暈を起こしそうになった。 可愛い赤ちゃん、と思って愛でていたら、急にオトナの色気をむんむんに出され、食われそうになっている。 へとへとに疲れて甘えたになってるけーくんのために、俺がたくさん尽くそうと思っていたのに。 全身が甘く痺れて、心臓が破れそうなほどに高鳴って。 ……めちゃくちゃに気持ち良くなりたくて、どうしようもなくなっちゃってる。 俺は明日も仕事だけど、いいや。 今夜はたっぷり、けーくんを愛して、けーくんに愛してもらおう。 俺はへにゃりと笑うと、甘えきった声で大好きな彼氏の名前を呼んで、相手に身を委ねた。

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