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第7話

「はぁ……っは……ぁあ……はあ……っ」  口くらい閉じたいのに、そんな簡単な事がいつの間にか酷く困難になっていた。  あれから更に何人も咥えて顎も疲れ切ってしまったし、じっとしているだけで息が上がる。  丘の上のベンチから、確かに移動はした。  けれど公園から出る事はなく、着いた先は園内の公衆トイレだった。  その1番奥の個室、洋式トイレの上に、彼は俺を仰向けに括りつけた。 「ぁ、んっ……!」  乳首には、誰がいつ用意したのか、ローターが貼りつけられている。  体の落書きは、あれから更に増えた。 「あ、んんっ……!」  聞こえる足音に、俺は息を呑む。  外側に開く、個室の扉には「使用中止」の張り紙がなされたけれど、鍵はかかっていなかった。 「っ………………」  近付いてきた足音は、用を足してすぐに出ていった。俺の客ではなかったらしい。  この個室が故障中などではない事は、ネットで知らせておいたと彼は言っていた。随分と段取りが良かったから、俺が知らずにいた画像の流出も、恐らく彼は把握していたのだろう。  直接書き込みや画像を確認したわけではないが、ネットで宣伝したという真偽ならば、実際にここを訪れる人間がいる事によって実証されている。この場所でも、既に5人の相手をしていた。  しかし夜中とは違い、やはり日中に訪れる人間はまばらだ。  その分待つ時間は長くなり、乳首に取り付けられたローターに喘がされ、尻を塞ぐ玩具もディルドからバイブに変わっていた。  両手を縛られ自力ではどうにも出来ない俺は、訪れた人間に、外してくれと強請るしかない。  だが公園の公衆便所で、見知らぬ男を甚振る趣味があるような人物が、それを叶えてくれる筈もなかった。解放を願う事は、早々に諦めた。  誰かが扉を開けるまで、俺は、じっと息を潜め、振動する玩具の刺激にただ耐えている。  困ったな。  誰か来てくれない事には。  落書きが増えても、拘束が増えても、玩具が増えても、それはもう、構わないから。  誰か来ないと、金が貰えない。  彼に頼まれたブラックコーヒー、買わないといけないのに。 「ぁー……」  虚ろな目が、静かに開く扉を捉える。  落ちて来た前髪を払う事も出来ず疲労困憊、寝不足も加わっているから、目を開けてもやはり顔立ちまではよく分からない。  でも男だ。そのくらいの判断はつくし、そもそもここは、男子便所だ。  分かっていて来たのか、半信半疑か、或いは全くの偶然か。  なんだって構わない。  拘束などされるまでもなく、酷使し過ぎて閉じる体力のなくなった両脚を、一層開いてみせた。 「ぉれの、あな……つかって、くらさぃっ……」  今が何時だろうと、ここだけは未だに夜だ。  彼が来るまで、夜は続く。  もしまた彼の気が変わって、違う飲み物を求められても、今度はすぐ応じられるように、出来るだけ沢山、稼いでおきたい。 「しよーりょーは……じゅうぇん、ですっ……じゅうえん、くぁさいっ……!」  俺は呂律の回らない舌で、この身の価値を、口にした。

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