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第2話 俺は男だ!
オッス! 俺、羽柴 和葉(はしば かずは)15才。
和葉なんて女みたいな名前だけど、
れっきとした ”男” だ。
おまけにチビで痩せぎす。
いっくら筋トレに励んでも弱っちい体に筋肉は
まるで付かず。それでも ――
何故か? バストサイズにだけは恵まれ
アンダー&トップのサイズは
70-93、堂々の(?)Fカップだ。
友達には、身長と筋肉に行くべき栄養が全部
胸に吸収されちゃったみたいだねぇ~と
笑い話しのタネにされてる。
こんな事、友達に言えば反感を買う事
間違いなし! なのだが、
ボインはボインなりに苦労も多いのだ
まだピチピチの16才という若い身空(みそら)で
慢性的に酷い肩こり症だし。
通学電車の中ではしょっちゅう痴漢に遭うし。
今まで付き合った彼氏は揃いも揃って全員、
俺の男子にしては珍しく豊満な胸が目あてだった。
で、たった今 ――
「ごめん、俺、真面目に付き合うなら
やっぱ普通体型の可愛い娘がいいから」
なぁんて、
チョ~失礼な捨て台詞をぶつけられ
4人目の男と別れた。
(正確には捨てられた?)
そう言えば、歴代3人の彼氏にも
似たような言葉でフラれたような気がする……。
最早、俺に待っているのは先の見えない空っぽな未来
だけ?
何も考えられない……。
交際中は手を変え品を変え、俺の気を惹こうと必死で。
ひと度、俺が体を許せば
やれ『揉ませろ』だの『パイ*りしろ』だの
『おっぱいにぶっかけさせろ』だの ――
やたらマニアックな事を言ってきた。
あんな酷い仕打ちをしておきながら、
やっぱり最後は女に走ったバイセク男への文句は、
不思議な事に何も思い浮かばなかった。
役所の有線放送スピーカーが
”午後5時の夕焼け小焼け”を流し始める。
それと同時に俺のハラの虫がギュルルル~~ッ。
っと鳴った。
男にフラレてもハラは減る。
あ、そうだ、今夜はお鍋にしよっと。
我が家はひと目惚れした母と再婚したはいいが、
その母と1度も床を共にしないうち ――
(つまり1回もヤらないうち)母に先立たれた不憫な
二次元・童貞オタクの継父と。
家長があまりに頼りないため、
しっかりせざるを得なかった超過保護なブラコン兄、
女の癖に家事は全く出来ないズボラな姉貴、
そして家族の中で一番オトナな弟の5人家族。
3年前、事故で母を亡くしてから家(うち)の
家事全般は俺が受け持っている。
4代目彼氏にフラれたショックから、
早くも立ち直った俺はスーパーの特売を思い出し、
パッとかけだそうとして ――
ズルッ
へ?
バッシャァァーーン!!
橋から足を踏み外しその下の小川へ、
ものの見事に落ちてしまった。
こんな可哀想な俺に、
救いの手を差し出してくれるような
物好きは1人としておらず!
近所の小生意気な小学生達が私を指さし
冷ややかに笑って、通り過ぎていった。
うぇぇぇ~~ん……も、穴があったら潜りたい。
で、いっその事そこで一生暮らせたら。
なぁんて、バカな事を考えていたら。
俺のすぐ横の水面がブクブクとにわかに
泡立ってきて……
やがて小さな渦巻きを作り ――
あー? なんだこりゃ……
と、思いながら、しばらくその渦を見ていたら。
だんだんソレは大きさを増し ――
え ―― っ!?
まずはその渦に近い方の右腕が渦の中心へ
引き込まれ。
ちょっと待って、何コレぇぇーっ。
次に右半身がググッと渦の中心へ ――。
あっという間に俺は、
ダイソンの掃除機並みの超強力バキュームで
その渦の中へ引きずり込まれてしまった。
うわぁぁーー、マジちょっと待って!
この小川ってこんなに深かったの~??
グル グル グル グル……
あぁ、目がまわるぅ。
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