2 / 26

第2話 俺は男だ!

オッス! 俺、羽柴 和葉(はしば かずは)15才。 和葉なんて女みたいな名前だけど、 れっきとした ”男” だ。 おまけにチビで痩せぎす。 いっくら筋トレに励んでも弱っちい体に筋肉は まるで付かず。それでも ―― 何故か? バストサイズにだけは恵まれ アンダー&トップのサイズは 70-93、堂々の(?)Fカップだ。 友達には、身長と筋肉に行くべき栄養が全部 胸に吸収されちゃったみたいだねぇ~と 笑い話しのタネにされてる。 こんな事、友達に言えば反感を買う事 間違いなし! なのだが、 ボインはボインなりに苦労も多いのだ まだピチピチの16才という若い身空(みそら)で 慢性的に酷い肩こり症だし。 通学電車の中ではしょっちゅう痴漢に遭うし。 今まで付き合った彼氏は揃いも揃って全員、 俺の男子にしては珍しく豊満な胸が目あてだった。 で、たった今 ―― 「ごめん、俺、真面目に付き合うなら  やっぱ普通体型の可愛い娘がいいから」 なぁんて、 チョ~失礼な捨て台詞をぶつけられ 4人目の男と別れた。 (正確には捨てられた?) そう言えば、歴代3人の彼氏にも 似たような言葉でフラれたような気がする……。 最早、俺に待っているのは先の見えない空っぽな未来 だけ? 何も考えられない……。 交際中は手を変え品を変え、俺の気を惹こうと必死で。 ひと度、俺が体を許せば やれ『揉ませろ』だの『パイ*りしろ』だの 『おっぱいにぶっかけさせろ』だの ―― やたらマニアックな事を言ってきた。 あんな酷い仕打ちをしておきながら、 やっぱり最後は女に走ったバイセク男への文句は、 不思議な事に何も思い浮かばなかった。 役所の有線放送スピーカーが ”午後5時の夕焼け小焼け”を流し始める。 それと同時に俺のハラの虫がギュルルル~~ッ。 っと鳴った。 男にフラレてもハラは減る。 あ、そうだ、今夜はお鍋にしよっと。   我が家はひと目惚れした母と再婚したはいいが、 その母と1度も床を共にしないうち ―― (つまり1回もヤらないうち)母に先立たれた不憫な 二次元・童貞オタクの継父と。 家長があまりに頼りないため、 しっかりせざるを得なかった超過保護なブラコン兄、 女の癖に家事は全く出来ないズボラな姉貴、 そして家族の中で一番オトナな弟の5人家族。 3年前、事故で母を亡くしてから家(うち)の 家事全般は俺が受け持っている。 4代目彼氏にフラれたショックから、 早くも立ち直った俺はスーパーの特売を思い出し、 パッとかけだそうとして ――  ズルッ へ? バッシャァァーーン!! 橋から足を踏み外しその下の小川へ、 ものの見事に落ちてしまった。 こんな可哀想な俺に、 救いの手を差し出してくれるような 物好きは1人としておらず! 近所の小生意気な小学生達が私を指さし 冷ややかに笑って、通り過ぎていった。 うぇぇぇ~~ん……も、穴があったら潜りたい。 で、いっその事そこで一生暮らせたら。 なぁんて、バカな事を考えていたら。 俺のすぐ横の水面がブクブクとにわかに 泡立ってきて…… やがて小さな渦巻きを作り ―― あー? なんだこりゃ…… と、思いながら、しばらくその渦を見ていたら。 だんだんソレは大きさを増し ―― え ―― っ!? まずはその渦に近い方の右腕が渦の中心へ 引き込まれ。  ちょっと待って、何コレぇぇーっ。 次に右半身がググッと渦の中心へ ――。 あっという間に俺は、 ダイソンの掃除機並みの超強力バキュームで その渦の中へ引きずり込まれてしまった。 うわぁぁーー、マジちょっと待って! この小川ってこんなに深かったの~??   グル グル グル グル…… あぁ、目がまわるぅ。

ともだちにシェアしよう!