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第25話 とある決心

翌日、俺はこの週末のうちに地元へ戻って来られるよう 早馬便(=車)で王都へ赴いた。 これから先の生活を考えればこの出費はかなり 痛手だったが致し方ない。 格安な馬車ではどう急いでも3日は掛かってしまう から。 ま、俺が王都へ行ったという事は遅かれ早かれ エディ、そしてゲイブの耳に入ってしまう。 そして俺のした事がバレてしまったら……。 コトは急を要する。 出逢いの記念にと、エディから貰った懐中時計で 時間を確認しながら先を急ぐ。 目的の場所は宮廷の尚書部。 王の命令・王と諸侯の契約書・賢人会議の議事録などの 重要書類を作成保管している部署です。 その特質上、王族の最高機密とも言われる 該当王族の家族構成・家長の正室及び側室、 その候補者の氏名・略歴などもここに保管されて います。 俺からの申し出を聞いた尚書官は、 たまたまその時見ていた書類から目を上げ、 驚きの表情で俺を見返した。 「あ、あの ―― 失礼ですが、今、何と申されたの  でしょう?」 「はい。フォン・ランカスター卿エドワード公爵の  正室候補者名簿から私(わたくし)の名前及び  略歴等を抹消して頂きたいと」 手っ取り早く言えば ―― 候補者の座を自ら退くという事。    この尚書官の後方で執務中だった同僚達も 俺の声が聞こえたらしく、大いに狼狽え始めた。 ……そりゃそうだ。 貴族の中でも最高位・公爵の正室候補になる、 という事はその貴族にとって大変栄誉な事なのだ。 たとえ正室になれなかったとしても、そのまま後宮に 入り側室又は上級女官になるという選択肢も拓かれる。 それに、宮廷より支給される準備金or慰労金の額も 相当なモノで。 ステフ曰く ―― 死ぬまで左うちわの優雅な生活が 約束されているほど。 すると狼狽えていた尚書官の中の2人が慌てて何処かへ 出て行った。 おそらく宰相・ゲイブの元だろう。 そのうちバレる事は覚悟しているとは言え、 ”今では”マズい。 「では、今の申し出万事良きにお計らい下さるよう、  お願い致します」 と、自分の要件だけさっさと述べ、踵を返し、 足早に尚書部を後にした。

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